河原あずの「イベログ」

コミュニティ・アクセラレーター 河原あず(東京カルチャーカルチャー)が、イベント、ミートアップ、コミュニティ運営で日々考えることを記録してます。

コミュニティ・アクセラレーターという仕事〜「想い」を引き出して、共鳴しあう瞬間を創る。

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コミュニティ・アクセラレーターは「A to Z for your community = コミュニティの全部に関わる活動」を行う仕事です。


「コミュニティ・アクセラレーター」という肩書きを名乗って、1年が経ちました。当初は、自分の活動を包括するのにいいワーディングがないか考え、その結果生まれた「自称」でしかなかったのですが、徐々に対外的に使う機会も増え、少しずつですが、河原あずの肩書きとして認知されるようになってきています。

コミュニティ・アクセラレーターは、LinkedInで検索したところ、当記事執筆日時点で世界に私1人しか存在しない職業です。いわば「職業をつくった」わけなのですが、思い返してみると、この肩書きについて、きちんと説明をしたことがないことに今更のように気がつきました。そこで、この記事では、自分の活動の内容を引きながら「コミュニティ・アクセラレーター」という仕事について、説明していきます。

説明する前にちゃぶ台を返すようなことをいうと、肩書き自体には大した意味はないと思っています。

もともとは自身を「イベント・プロデューサー」と呼ぶことの違和感から、この肩書きづくりはスタートしました。イベントは部分であり、手段でしかないのに、それがクローズアップされることに自身の活動とのずれを感じたのです。

大事なのは肩書きそれ自身ではなく「何を目指しているか」そして「そのために何をしていくか」です。それを前提に、あえて(逆説的ですが)肩書きをつくりました。あえて肩書きをつくって背負うことは、いわば、自分がそういう活動を永く意思をもって続けていくのだという、対外的な宣言のようなものなのです。

今回の記事では「コミュニティ・アクセラレーター」という言葉を説明することで、自身の活動を、より分かりやすく伝えていければと思います。


コミュニティ活動に必要な3つの要素

「コミュニティ・アクセラレーター」を直訳すると「コミュニティの加速支援者」です。これは、私にとっては、2つの意味を内包しています。

1つは「コミュニティ自体を加速支援していく存在」、もう1つは「コミュニティの力で、想いのある人々の活動を加速支援していく存在」という意味です。

この「コミュニティ自体の加速支援」と「想いある人々の活動の加速支援」という2つの要素は、互いにつながっていて、切り離すことができないものです。文章にするとややこしいので、絵に書いて説明します。

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絵にするとこんな具合です。当然のことながら、個々人が「こういう方向に進みたい」と想う角度や強さは、個人によって異なります。まったく同じ人間など存在しない以上当たり前のことです。

しかし「進みたい方向は、微妙に違うけど、おおまかに言うと同じ方向に向かっている」という人たちは、誰しも見つけることができます。いわば「仲間」とか「同士」と呼ばれる人たちのことですね。この「おおまかに言うとこっちの方向に向かいたい」という人たちが集まり、相互に助け合いながら進んでいく乗り合い船的な集合体が「コミュニティ」だと定義できます。

この絵をみると、世の中のコミュニティ活動を活性化させるには、3つの要素が必要なことが分かります。


コミュニティ活動の活性化に必要な3つの要素

1:個々人の「進みたい方向(想い)」が明確であること
2:おおまかにいうと同じ方向に進みたい人(想いが重なる人)たちを精度高くつなげること
3:集合した人たちの方向性とおおまかにあう方向にコミュニティを的確に導くこと


先にあげた「想いある人々の活動の加速支援」には1、2の要素が、「コミュニティ自体の加速支援」には2、3の要素が含まれます。いわば「個人とコミュニティの自己実現のバランスをとっていく」ことが重要なのですが、個人の想いとコミュニティのビジョンのどちらか一方がおざなりにされてしまうと、コミュニティは次第に成立しなくなり、時に形がい化していくことになります。バランスをとったり、時に想いを強化したり、クリアにしながら、活動していく必要があるのです。

なお「個々人」と書いてありますが、法人やチームなどの「組織」に置き換えても、方向性が重なりあう個人と組織、組織同士のビジョンのマッチングを行い、方向づけを行うことができるので、基本的な考え方は同じです。


コミュニティ・アクセラレーター5つの施策

コミュニティ・アクセラレーターは、この3つの要素すべてを網羅するさまざまな活動(施策)を通じて、コミュニティづくりやコミュニティ活性を行います。

「想い」という言葉が多いのがひとつの特徴です。少ししつこいかもしれないですが、先にも述べた通り「個々人の向かいたい方向性」がコミュニティ形成の基本である以上、すべての基礎は「想い」になるのです。その想いを引き出したり、つなげたり、共鳴させたりすることが、コミュニティ形成の基礎であり、すべてなのです。

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このステートメントに実際に自身が行っている施策が網羅されています。順番に事例も交えながら、説明していきます。


1.「想い」を引き出すファシリテーションの提供

ワークショップの要素の強いイベントづくりや、大学授業向けのメンタリングやワークショップなどを行っています。また、起業家や新規事業担当の方、フリーランスで活動されてる方などなど、さまざまな方に、ファシリテーションスキルを生かしたコーチングやメンタリングを行っています。

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大学でのワークショップ形式の授業の様子(愛知淑徳大学・富樫ゼミ提供)

なぜこのような活動が必要かというと「想い」をクリアに語るのは、決して簡単なことではなく、多くの人たちが「自分の想い」を顕在化できていないからです。また、すでに「想い」がある人たちの中にも、迷いを持ちながら活動している方も少なくありません。

これはある種、当然のことで、だからこそ客観視点を持ちながら「想い」を確認したり、自己理解を深めるプロセスが時に必要となります。コーチングやメンタリングは、そのためのお手伝いです。

「想い」がはっきり見えていない状態だと、次に必要なアクションが明確にならず、どんな人や場に引き合わせても、あまり効果がでなくなってしまいます。一見、コミュニティづくりからは遠い活動に見えて、実はすべての基礎となるとても大事なプロセスなのです。


2.「想い」を持つ人たちが共鳴できるコミュニティの構築

「想い」がすでに顕在化されると「この人とこの人、このターゲットとこのターゲットを引き合わせる場をつくることで、ある種の方向性を持った刺激的な場がつくれるのでは?」という勘が働き、形にできるようになります。そんなわけで、コンテンツを用意し、人同士をかけあわせ、場をつくり、ゆるいつながりを作っていくさまざまな活動を行っています。

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たとえば、理事をつとめている「一般社団法人コトの共創ラボ」で実施しているのは「めたもんショー」という、社会の異能人材をカード化するコミュニティイベントです。また、出演した「めたもん(異能人材)」を集めたミートアップ(飲み会)も開催してます。このような活動を通じて、異能な人たちがつながり、新しい発想やモチベーションをつちかう場づくりを行っています。

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50人規模のイベントと、10人規模のミートアップを組み合わせてつながりを温めているのも「コトの共創ラボ」の特徴です。


Peatixと共催している「コミュコレ!」は渋谷のコミュニティキーマンを集めたミートアップです。毎回30人のパネリストを集めているのですが、目的は実はトークコンテンツづくりではなく、登壇している人たち同士や、登壇者と来場者の新しいつながりを作ったり、関係性を再燃させたりすることなのです。

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Peatixと渋谷のコミュニティを盛り上げるために開催している「コミュコレ」

さまざななコミュニティ系イベントをプロデュースしていますが、イベントは「コミュニティを活性化させ、方向づけを示す手段」だと定義できます。コンテンツを用意し、人を集めることで、新しい人のつながりをつくったり、人のつながりを活性化していく。そして「こっちの方向に向かっていこう」と内外に発信していく。この視点が重要だと考えています。


3.「想い」を持つ人たちとのコラボレーション
4.世の中に新しい「共鳴」
をもたらすリアルコンテンツのプロデュース


外のコミュニティを助けるためにコラボレーションすることもあります。そして、コラボレーションの多くは「リアルイベントのプロデュース」というかたちで実施しているので、3と4はまとめて事例紹介します。

たとえば、若手看護師のコミュニティ「看護師ーず」とコラボして開催した「渋谷ナース酒場」は、看護師ーずの活動理念に共感した結果、実現したリアルイベントです。

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「渋谷ナース酒場」写真提供:むねさだブログ

看護師ーずは「看護師が病院の外へでて、一般の方々と接点を持つことで、もっと健康な世の中をつくりたい」という理念で活動されています。彼らと出逢い、そしてもっとカジュアルに、さまざまな方がこの活動に巻き込まれてほしいと思い、イベントを一緒に企画することになりました。結果、朝日新聞日経新聞他、さまざまなメディアにも取り上げられ、「看護師の新しい活動」として、社会的に大きな反響を呼びました。

withnews.jp


現在、保育士コミュニティ「Hohana」とのコラボレーションイベント「保育士さんといっしょ!!」も企画されてます。「活動を社会に発信していきたい」という想いある人を紹介するためのイベントコラボは、今後ますます加速させていきます。

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hoikushisan01.peatix.com


世の中にはたくさんのイベントがありますが、「想い」がしっかり伝わる上に、世の中にインパクトある発信ができるユニークさを持つイベントはそう多くはありません。イベントプロデュースやオリジナル企画のノウハウを活かしながら、素晴らしい「想い」を持つさまざまな方々を紹介するために、世界をあっと驚かせる、感動させる、多くの人たちに楽しんでもらいながら共感を呼ぶイベントコンテンツをつくっていければと考えています。


5. より「想い」が具体化しやすくなるエコシステムづくり

イベントがイベントで終わることなく、イベントによって人と人がつながりあい、コミュニティから新しい価値がかたちになって生まれる世の中になってこそ、本当の意味で、コミュニティが育っている社会になると考えてます。そのため「想い」がかたちになるよう、実現するよう、持っているリソースを活用しながらサポートしていく活動も、教育やビジネスなどにも絡めながら実施していきます。

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ひとつの事例としては、ゲスト講師として関わっている愛知淑徳大学富樫ゼミと、ネイルシールアプリ「YourNail」をサービス提供している「uni'que」との産学連携授業があげられます。学生さんのアイデアを世にだしたいという富樫准教授の想い、みんなの個性が生かされる世の中をつくり、世界をもっとユニークにしたいというuni'que CEOの若宮さんの想い、授業に本気で取り組む学生さんたちの想いで成り立っている施策です。「ただのビジネスプランコンテスト」で終わらず、学生さんたちがデザイン思考のフレームで考えたアイデアを実際にビジネス実装していくのが、富樫さん、若宮さんと設定した、この授業のゴールとなります。

prtimes.jp


こちらは正直言うと、1から4までの取り組みと比べると、まだまだ発展途上の部分ではあります。とは言いつつも、他にも、イベントに止まらない施策も検討しているところです。足の長い活動になるので、実績がでるまでには、じゃっかん時間がかかるかもしれませんが、ひとつひとつの案件を形にすることで「想い」ある人がきちんと活躍できる、世の中に発信ができ、前向きに生きることができる社会を作れたらと考えています。


コミュニティを生かし、コミュニティに生きるということ

自身の活動をわかりやすくまとめるためにつくったタグラインでは、自身のミッションをこのように定義しました。

「想い」を引き出して、共鳴しあう瞬間を創る

いわば、先日ブログに書いた「Serendipity」をひとつでも多く生み出していくことが、活動のゴールとなります。非常に多岐に渡る活動をしていますが、コミュニティにコミットして生きるには、そんな瞬間をつくるために必要なことすべてを行っていくことが、大事なのではないかとあえて思うようにしています。

どちらかというと活動をフォーカスしていくことが今のトレンドのようにも思いますが、私個人は、共鳴できる想いがある限りは、ジャンルやカテゴリにとらわれることなく、どんどんコラボレーションを重ねていきたいですし、それが様々な人たちが響きあう瞬間を創っていくと信じています。そう信じて実践できることが、コミュニティを活性化して、コミュニティにまみれて生きるには、大事な資質なのではと思うのです。

また、あえて、この記事では、全体の活動を「From AZ.〜A to Z for your community」というタグラインでくくり、会社(東京カルチャーカルチャー)としての活動と、個人のプロボノ活動などを併記しています。ビジネスや所属会社のブランディングになるかならないかの違いでしかなくて、公私の活動全体をライフワークとしてみなせば、すべての活動は一貫しているからです。発信する場によっては、バランスは取りつつも、こういう「公私の壁を意図的にぼやかす」ことも、コミュニティを相手にする際には、時に必要なのではないかとも考えてます。

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以上、まとめようと努力してみましたが、まとめてみても、結局、わかりづらい仕事に見えるかもしれません。しかし、この1年間「コミュニティ・アクセラレーター」という肩書きを背負うことで確信してきたのは、コミュニティを生かしていくことが、世の中をもっと生きやすくするし、ビジネスの広がりもつくるし、個人が活躍できる社会づくりにつながるということでした。いつか「コミュニティ・アクセラレーター」という概念が広く浸透する日がくることを夢見て、ひとつひとつのことを、着実にかたちにしていければと思います。「想い」あるみなさん、ぜひ一緒に、響きあえるコラボレーションをしましょう。