河原あずの「イベログ」

コミュニティ・アクセラレーター 河原あず(東京カルチャーカルチャー)が、イベント、ミートアップ、コミュニティ運営で日々考えることを記録してます。

イベントは司会が9割!〜カルカルで学んだイベントを成功に導く3つの司会術

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普通のイベントプロデューサーには一般的ではないのかもしれませんが、東京カルチャーカルチャーでは、すべてのプロデューサーが、多くのイベントで司会進行も行います。

イベントを盛り上げるための要素はたくさんありますが、その中でも重要なピースは「司会(MC)」です。ぼくの職場の東京カルチャーカルチャー(カルカル)のコンテンツの多くは登壇者によるトークを軸とする「トークライブ」であり、トークライブでは、他のエンタメコンテンツに比べても、ますます進行役である司会の重要性は増します。チーフプロデューサーでありぼくのイベントの師匠の横山さんは「イベントは司会が9割」とよく言います。

確かに、さまざまな外のトークイベントをみると、司会進行に不満を覚えることは多いです。「俺のほうがうまくやれるよ!」みたいなライバル心もなくはないのですが(笑)さまざまな要素が不満の要素にはあります。たとえば、声が小さい、とか、登壇者のひとりのトークが長くなりすぎて配分ができてない、とか、会場は「もう終わってよ」という空気なのにどんどん伸びる、とか、まあ、いろいろです。

トークコンテンツにおいては、司会は各コンテンツの「ファシリテーター」を兼ねることも多いです。Facilitateとは、英語で「促進する」という意味で、要するにこの場合の司会の役割は「トークの促進役」ということになります。

一方で、たまにみられるのが「みなさまに質問です。〜についてどう思いますか?●●さんはいかがですか?▲▲さんは〜?」という前振りだけを登壇者にして、あとはひたすら聞くだけ、という司会進行役です。いわゆるビジネスイベントの「パネルトーク」にありがちな展開なのですが、これが何をFacilitate(促進)しているかと言うと、うーん、促進役、というか、調整役で、手旗信号でやってる交通整理の域を出ていないなあ、という気も致します。

このスタイルでも面白くなるときは、あります。しかし、実はこのスタイルは、個々の登壇者のトークスキルへの依存度がとても高いのです。この手旗信号の「前振り」に対して、面白い小話ができる登壇者がいれば、どかんと盛り上がります。しかし、たとえば3人登壇者が並ぶときに、3人ともこのような話術に長けていることは非常に少ないです。

ぼくが進行役をするときに心がけるのは、この依存性をできるだけ廃して、話が上手なひとはもっと上手にみせ、あまり前で話すことに慣れていない方の個性も引き出し会話に混ぜ、ここでしか聞けない話がどんどん飛び出すようにして、会話にリズムとグルーヴをもたらし、お客さんに「この話が聞けてなんかよかった!」と思わせるようにしよう、ということです。

そのために心がけていることが、主に3つあるので、ご紹介しますね。

まず1つ目は、自身の立場を「最も登壇者に近い観客」と位置付けることです。

どういうことか。まず、登壇者の話に対して、とにかく反応します。うなずいたり、相槌を口にだしていったり、「え?そうなんですか?」と混ぜ返したり。不自然に見えない程度に、やや大げさに分かりやすくこういうリアクションを繰り返します。こうすることで「ノリ」と「熱」が産まれます。だって、みなさんのプライベートでも、聞き手がうんうんと熱心に反応してくれたほうが、トークに熱が入りやすいですよね。それとまったく一緒のことをやります。

そして、ただ相槌をうつだけではなくて、本当に自分が、相手の話題に熱心に食いつき、没入していくことが大事です。たとえ、本来は自分の関心とは遠いテーマでも、とにかく「この会話にすごく興味があるしどんどん聞きたい!」という「空気をつくる」のです。(ぼくの場合は、たいてい、本当に楽しくなっちゃうし、話をどんどん聞きたくなっちゃうんですけど)

「質問」も大事です。相手の興味を刺激するような質問を必死に用意します。いい質問をひとつ、登壇者にくりだせると、登壇者の自身に対する関心の強さへのアピールになり「この人と会話するのは楽しい!」というモードに引っ張ることができます。質問への答えというのは、そのジャンルに対する登壇者の考え方をあぶりだしますし、同じ質問を他の登壇者に繰り出すとまた別の視点がそこに加わります。質問した当人も気持ちいいし、気持ちいいとますます会話は盛り上がります。

この項目の最後。もうひとつ大事なのは「ツッコミ」です。笑いにつながりそうなことを登壇者がいったらすかさずツッコミをいれます。お笑いバラエティ番組をみているとよくわかりますが、上手な司会の上手さの要因は「ツッコミ」です。登壇者が「さあどうぞ」と美味しいタイミングでネタを投下した際はしっかりツッコミを入れて、ちゃんといじり倒して、会話のグルーヴを作っていくことがとても大事です。

うなづき、相槌、質問、ツッコミ、いじり。それらは実は、心の中でお客さんがトークを聞きながら延々やっていることです。「お客さんの代表」として、客席にいるお客さんが内心思っていること、行動していることを代弁してひとつひとつカタチにしていくと、お客さんがステージに感情移入してくれることにつながります。こんな風に、特等席でトークを楽しんでる観客という感覚を持って、ステージをつくるのをぼくは心がけてます。


2つ目は「すべてのお客さんに優しいトークをつくる」ということです。

ビジネス系イベントのパネルトークによくあるのが「専門用語乱発モード」に入ることです。これが非常に扱いに繊細さが必要でして、専門用語がちょいちょいと飛び出してくると、司会としてのぼくは、モードを切り替えるようにしてます。

 

具体的にはどうするのか、というと、客席のうちほんの数名でも「わからないかも?」という単語が出てきたら躊躇なく止めて「なるほど!ところですみません、●●●ってなんですか?」と聞くのです。知っている単語でも、知らないふりで質問することもあります。難しい概念だったりすると、わかりやすく「ああ、ちょっと難しいけど、要するに●●みたいなものってことですかね?」って噛み砕いた例えで説明を試みます。


実はトークコンテンツにおいていちばん避けなくてはならないのは「内輪談義に陥る」ことです。内輪の話に終始するステージトークには、コミュニティの外からきたはじめてのお客さんは一気に醒めるものです。これでは、開かれたコンテンツにはなりません。

 

専門用語には、無意識に人の縄張り意識を促す効力があるらしく「その専門用語、おれもわかる!」みたいな仲間意識からか、一度飛び出すとどんどん専門用語の応酬になったりするのです。しかし専門用語というのは要するに「究極の内輪の言語」なので、内輪のひとたちにとっては仲間意識が強められるかもですが、外側の人間を結果置いてきぼりにしてしまうことが、ままあるのです。

 

まあ、そこまでいかなくても、わかんない単語がたくさんある本だと、読書が進まなくなる、みたいなことは多々ありますよね。トークライブも本とおなじく「エンタメ」なので、究極に分かりやすさを追究する必要があるのです。

500 Starups Japanさんと一緒にやったイベントで「SMB」という単語がでてきました。スタートアップ系の仕事をしてる方やコンサルさんはよく使うのでステージのみなさんは躊躇なく何度も繰り返し使っていたのですが、ぼくはすかさずに「あの、ぼく横文字苦手なんですが、SMBってなんですか?」って聞きました。ここで勘のいい登壇者は「しまった!」と思ってくれて「スモールビジネスの略ですよ」と返してくれます。ぼくはこう返しました。「ああ、つまり中小企業ですね!なるほど!」

そして、そのイベントの終演後アンケートにこんなものを発見しました。「司会の方が、専門用語を噛み砕いてくれたので、脱落せずに済みました。SMBってわからなくて、一瞬どうしようって置いてきぼりになりかけたんですが、説明してくれて続きに集中することができました!」

 

これは嬉しかったですね。主催者の500 Startups Japanの澤山さんも「さすがプロの司会ですね!これ大事なんですね!」と喜んでくれました。

トークやメディアコンテンツには「コンテンツは自分の母親にもわかるように噛み砕こう」という鉄則もあり、司会はできるだけわかりやすく今行われている会話を進めようと思うのです。しかし、すべての登壇者がしゃべりのプロではないので、わかりやすさをイメージするまでには至りません。それはそうですよね。ステージ慣れしてない方にしてみたら、それが「普通」なのです。であれば、司会がプロ役としてそのポイントをしっかりと意識して、会話をリードしていく必要があるのです。


3番目に心がけているのは「リズムやテンポ」です。安定した、だれない、強弱、メリハリのある会話をつくるよう心がけます。

司会は、時計に対して常に敏感です。時間をどうマネジメントするかが最も大事な仕事のひとつです。司会は、お客さんの表情にも敏感です。お客さんが小さなあくびをひとつしたら、今の話題をまいて、次のトピックに移ってみたりします。司会は、登壇者が大事なこと、いいことを言ったのに、早口で流れてしまったりして客席の反応が薄かった場合、あえてそれをゆっくりと繰り返して強調します。司会は、会話を落ち着けたいときはゆっくりしゃべり、会話をたたみかけたいときはしゃべりのテンポをあげます。

司会進行の仕事って、オーケストラの指揮者に近いなあって時々思うのですが、自身がテンポを作っているのだと強く意識して、トークが単調にならないように心がけてます。

音楽もそうなんですが、リズムやテンポが安定すると、アマチュアのオーケストラやバンドでも、一気に安定感がでてきます。「リズム体」(※)という言葉が音楽の用語にありますが、同じことがトークにもいえます。音楽の根幹は、リズム楽器と低音楽器がつくるビートであり、だからこそ「体」と表現するのです。トークも一緒です。進行役による「リズム体」が安定すれば、素人感が薄れ、プロのステージにより近づきます。「パネルトーク」と「トークライブ」の違いは、このリズム体の違いだと言っても、いいかもしれません。

 

(※ ロックバンドでいうと、リズムを創る係の、ドラムとベースのことです。リズム隊、という表記もありますが、ぼくは「体」という表記のほうがしっくりくるので、こちらを使ってます。ワインでも言いますよね。ボディ。ちなみにバンドでいうと、ドラムとベース以外を「上物」と呼びますが、リズム体という基礎に乗っかってるから「上物」なのです。基礎がないとどんなにうまくても、崩れちゃいますよね。)


……
とはいえ、これらの司会スキルを、ぼくは誰に習ったわけでもありません。すべて独学で身につけました。なぜ身についたかというと、2008年から2012年まで4年間、600本以上のイベントの進行を見続けてきたのが大きかったのです。

そこで、カルカルのプロデューサーの横山さんやテリー植田さん、芸人さんの進行をみて、どうすれば、登壇慣れしていない方をステージにあげても面白く見せられるかを学んだのです。

で、そういう方々が上手なぶん、あまり上手ではない方との違いがよく見えるようになりました。そのあとサンフランシスコにわたり、本格的にイベントの司会をすることになったのですが、とにかく、いい司会、だめな司会をじっと見て、自分なりに考えて、実践しては改善した結果、今まで書いたようなことが徐々にできるようになってきた気がします。とにかく、上達のためには、勉強、観察と、実践あるのみです。

手軽な勉強、観察の方法としては、やはりテレビのバラエティや、ラジオなどで、上手な芸人さんの司会進行などのしゃべりをじっくり聞いてみることをお勧めします。個人的には、タモリさんはもちろん、伊集院光さん、引退されましたが島田紳助さん、マツコデラックスさんなどがとても勉強になる気がします。いずれの芸人さんも「素人いじり」が上手という特徴もあります。意識してバラエティを観るだけでも、だいぶ違いますよ!

ちなみに、個人的には、なんですが、明石家さんまさんはあまり参考になりません。天才すぎるので。たぶん、彼の話術は誰にもまねできませんね…。