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河原あずの「イベログ」

イベント屋・河原あず(ニフティ・東京カルチャーカルチャー)が、イベント、ミートアップ、コミュニティ運営で日々考えることを記録してます。

「マルサン・コミュニティの法則」でコミュニティづくりはうまく行く!〜コミュニティ構築3つのポイント

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「マルサン・コミュニティの法則」は、円滑なコミュニティ構築の肝になる大事な概念です。


「ファンコミュニティづくりをしよう!」と決意し、イベントを開催する企業さんが増えています。ハッカソン、アイデアソン、ワークショップ、試食会、試飲会などなど、形はさまざまですが、従来の「名刺を集める」ことを目的とした対ビジネス向けのイベントではなく、対消費者向け、ユーザーさん向けのイベントを開催する事例が増えてます。

また、新規事業関係者を集めた、ノウハウ共有やネットワークづくりを目的にした「同業者コミュニティ」づくりも盛んです。何百人と新規事業に携わる方が集合し盛り上がっているイベントの写真が頻繁にソーシャルメディアに上がったり、マスメディアに取り上げられたりしています。

しかし、イベントを重ねることが、コミュニティづくりに寄与しているかというと、正直なかなかうまくいかないケースもみられます。極端に言うと「イベントをやって、人を集めて終わり」というケースが多々あるように思うのです。

人をたくさん集めれば、なんとなく「盛り上がりのあるコミュニティ」が存在するように見えます。しかし、それが、しっかり育つようにデザインされたコミュニティかというと、そうでないケースが多いように見えるのです。

結果、増えるのは「人を集めて打ち上げ花火をあげ続けることにフォーカスした自称・コミュニティ」です。

たくさん人を集めれば、あるいは、何度も繰り返しイベントをやれば、コミュニティが育つというものでもありません。

しかし、コミュニティ構築にあたり、たった3個のポイントをおさえることで、誰でも、ハードル低く、ファンコミュニティや、同業者のコミュニティを、きちんと育てていくことができます。

コミュニティ構築のヒントになるのは、以前取り上げた「ミートアップ」の考え方です。ミートアップは、本場・アメリカでも、特別な才能を持っている人が実施しているわけでもなく、多くは「一般の人」がオーガナイザーになっています。そして、それぞれのコミュニティベースを育てているのです。つまり、誰にでもできることなのです。いくつかのポイントさえおさえれば。

ミートアップの考え方は、企業の周辺コミュニティ構築・運営においても、とても有効な、普遍的なものだと個人的には思います。サンフランシスコやシリコンバレーで、多くの企業が中小のミートアップを主催したり、協賛したりしているのはそのためです。自社のファンを増やしたり、仲間を増やしたり、数々のメリットを企業はコミュニティを構築することで得ています。

そのエッセンスを日本企業もイベントづくりにも取り込むことで、より活性化したコミュニティを育てることができるのです。

ぼくの場合は、主にこの考え方を、伊藤園さんと開催しているプロモソン「茶ッカソン」や、サンフランシスコでの日系コミュニティの活性化(新規事業コミュニティ「SUKIYAKI」や「J-POP SUMMIT」関連の取り組みなど)のために生かしてきました。実際、さまざまな人が行き交って、新しい出会いや発見のあるユニークな場所が作れていますし、この考え方を応用した場づくりが、コミュニティづくりの新しいトレンドになっていくのではないかと感じてます。

以下、ミートアップのエッセンスを取り入れた「企業関連イベントを通じたコミュニティ運営の秘訣」をご紹介します。

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立ち上げから関わっているシリコンバレー新規事業支援コミュニティ「SUKIYAKI」の勉強会の様子


1:集めすぎない

1つ目のポイントは「人を集めすぎない」ことです。

コミュニティ育成のポイントは「参加者すべてが顔をつきあわせながら、同じテーマを共有する」ことです。たとえばミートアップは、対面のコミュニケーションを重視することで、コミュニティを育てます。同じテーマに課題意識や興味・関心を持つ人が集まって、議論をしたり、一緒に場作りをするのが、ミートアップ的コミュニティの特徴なのです。

しかし「参加者ほぼ全てと対面でコミュニケーションをとれる人数」には限界があります。体感でいうと、多くて70人、イベント興行にすることも踏まえた上での適正人数でいうと、30〜50名といったところです。

コミュニティを育てることに主眼を置くのであれば、その「対面コミュニケーションが成り立つ適正人数」を踏まえて、集客しましょう。

200人、300人規模の「自称・コミュニティイベント」もあるように見えますが、正直な感想を言うと、その規模感のイベントは、単なる興行、パーティの域を出ることはありません。コミュニケーションを重視するイベントと、大勢を集めるイベントは、イベントづくりの考え方、構造がまったく異なりますし、300人集めて「コミュニティが育ってる!」と言っても、それは無理があるように思えます。

ただし、コミュニティベースが育った段階で、同窓会的に200人、300人集めるのは、それはそれで「勢いや成長を体感する」という意味で、コミュニティの活性に意味があります。コミュニティを育てていくバランスとしては、30〜50人規模のイベントを年に3〜6回、100人強のイベントを年1回くらいやるのが、ちょうどいい塩梅のように個人の経験からは思います。

イベントの動員についての考え方は以前も記事を書いたので、こちらもご参照ください。

azkawahara.hatenablog.com


2:「マルサン・コミュニティ」の法則。

この法則は、ぼくが編み出した法則ですが、コミュニティ構築においては重要な、肝になる仮説になっています。意識しだして数年ですが、今のところ、うまく動いているように思います。

1にも関わる問題なのですが、回数を重ねるごとに、イベント参加経験者は増えていきます。そして、動員を考えると、参加した人には何度も参加してほしいし、興味を持ってくれた新しい人にも来て欲しい。結果、常連さんも一見さんも増えて、どんどん動員が膨れ上がってくることがあります。

これをオーガナイザーが見たときに「やった!コミュニティが成長している!」と思うのかもしれませんが、動員が増えれば増えるほど「お互いのコミュニケーションやコミットメントが希薄化する」というジレンマが生まれます。

ジレンマに気づかずに、動員増を喜ぶオーガナイザーもいると思いますが、200人程度の規模を超えた段階で、コミュニティは変質していきます。大抵は、大きなイベントなどに様変わりして「アソシエーション」のような権威づけがされるか、体力が続かずに消滅や分裂をするか、どちらかです。

ではどうすればコミュニティを育てられるか。ぼくの考えを実体験からまとめたのが、下の「マルサン・コミュニティの法則」です。

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「3つの丸でコミュニティを捉える」これがマルサン・コミュニティの法則の肝になります。

コミュニティを3つの母体(すなわち3つの丸)にわけます。毎回くる、もしくは運営にコミットする「コア」(マルイチ)、数回に1回くる「常連」(マルニ)、そしてはじめてきた「新人」(マルサン)です。

大事なことは、イベント毎でのこの3つのカテゴリのメンバーの割合の設定です。イベントに際しては、この3つの丸が「およそ1対1対1」の人数で来るように調整します。調整といっても、きちんとこの割合で集客を計算してやるのは不可能ですから「声かけの際に意識する」というレベル感でおさえるといいでしょう。

50人程度のイベントを想定すると、三等分した際の人数はおよそ16人程度です。これをベースに、コミュニティも設計します。

1つ目の丸(マルイチ)、毎回くるような「コア」メンバーの人数は、最大で15〜20名程度が適正ということになります。逆に言うと、毎回誘う人の人数や、活動にコミットする運営サイドの人数は、それくらいにまでしぼっていいということです。なぜかというと、その人数が多すぎると、コミュニティの文化を維持するのが難しくなるのと、内輪の集まりの色合いがどんどん濃くなってしまうからです。

2つ目の丸(マルニ)の「常連」さんには、数回に1回声がけします。彼らには、コミュニティへのコミットメントは特に求めず、彼らが興味を持ってくれたテーマのときや、タイミングがあったときに来てもらいます。一芸に秀でた人や、常に新しいことを探索して持ち帰ってきてくれる方が「常連」層には、ハマります。

そして3つ目の丸(マルサン)の「新人」さんを手厚く、それぞれの層と同じくらいの人数を呼びます。そうすることで、イベントのマンネリ感を防ぎ、コミュニティに新しい風を吹き込みます。コアと常連だけのコミュニティはどんどん内輪な集まりになってきてしまう危険がありますが、新しい人たちが常に入り込んでいくことで、コミュニティの文化はどんどん変化し続けることになります。

もちろん「新人」は、コミュニティにはまれば、新しい「常連」の1人になってくれる(「マルサン→マルニ」の移行)でしょう。このバランスを意識することで、コミュニティに参画している人数「コミュニティ・ベース」はどんどん人数を増やして、厚くなっていきます。たとえば「茶ッカソン」の場合は、日本では200人弱のベースがあります。

「コミュニティ・ベース」の人数は増えても、1回のイベントに呼ぶ人数はコントロールして、50人程度におさめるのが大事なポイントなのです。そのバランスがうまく作れると「コア(マルイチ)がコミュニティの柱を担い」「常連(マルニ)が場のエンジンになり」「新人(マルサン)がフレッシュなアイデアや人脈を持ち寄る」という、理想的な場が運営できます。

大事なのは「コア」と「常連」は、役割の違いであって、ポジションの優劣はないということです。声かけの際に、自分が毎回呼ばれないことに不満を覚える「常連」さんがいたら、意図を説明したり、必要あれば、「コア」への参画をうながすのもいいかもしれません。人を呼ぶことではなく、このバランスをとってチューニングしていくのが、コミュニティマネージャーの大事な仕事なのです。


3:来る者は拒まない、去る者は追わない。


コミュニティの本質は「出入り自由」であることです。オープンであること、フラットであることが求められます。

「新人」の概念で書いた通り、来る者は拒まず受け入れます。新しい人を受け入れないコミュニティは硬直していきます。そのため、イベントにおいては、「コア」や「常連」が「内輪な空気を出さない」ことが重要です。「常連」の特別扱いもしないようにします。特別扱いをするべき対象は常連や新人に限らず「コミュニティに対する貢献を的確にその場でしてくれた方」です。

しかし一方で「去る者を追わない」のも大事です。新しく来た方が「あれ?ちょっと違うな?」と思ったら、二度目以降くることはないでしょうが、それはあえて、追わないようにします。自分の目的意識とあっていないということなので、無理やり次に呼んでも、同じような違和感を覚えられるでしょう。

「去る者を追わない」については「常連」や「コア」においても同様です。そして、あまりに去る者が多い状況は、コミュニティがうまくまわっていないことの証左なので、しっかりと運営に参画している「コア」メンバーで検証する必要が出てきます。問題意識やテーマ設定、主催者の意図と参加者のモチベーションにズレが生じている可能性があります。これをきちんとチューニングしていく必要が出てきます。

「来る者拒まず、去る者追わず」が原則ですが、例外もあります。コミュニティの秩序を崩すような方がいる場合です。こういう方がいる際は、その場やコミュニティから、お引き取り頂く勇気は、時に必要です。


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ここ数年、企業によるファンコミュニティづくりが流行しています。マスコミュニケーションを軸とした宣伝やブランディングが徐々に力を弱める中、ユーザーさんとの「エンゲージメント」を創ることで、新しいマーケティングをしていこうという意図でしょう。インフルエンサーを獲得し、そのひとたちにプロダクトや企業の魅力を拡散してもらう、というトライをしている会社もあります。

ところが、ファンコミュニティを創る、といっても、なかなかうまくはいきません。それもそのはずで、そもそも企業のほとんどの方は「ファンコミュニティを創る」という仕事をしたことがありません。

上司から「もし、最近、ファンコミュニティを創ってプロダクトをマーケティングしていくアンバサダーマーケティングとかなんとか流行ってるらしいな。うちもそういうのやらんのか」と振られても何をしていいのか見当つかず、まず何をするかというと、大抵、イベントをやり、人を集めます。

オープンイノベーションの重要性が叫ばれる中「新規事業担当者コミュニティ」も多数生まれています。しかし「オープンイノベーションというのがあるらしいな。コミュニティが大事らしいじゃないか。弊社もコミュニティからのオープンイノベーションをやるように」と上司から言われた人もまた、ビジネスづくりはやったことはあっても、コミュニティの運営に携わったことがないケースがほとんどです。とりあえず、イベントをやり、人を集める、を繰り返します。

両者は、たくさんのイベントを繰り返し、徐々に疲弊し、時に上司に「コミュニティはできているのかね?」と問われた時に、はたとある時点で気づくのです。

「何のためにイベントをやっているのだろう」「コミュニティは本当に、できているのだろうか」

ポイントや目的意識がずれたままイベントをただ繰り返すと、このような不幸を呼びがちです。

しかし、ぼくが書いたようなポイントさえおさえれば(そしてもちろん、参画してくれる参加者の皆様に対してきちんと「楽しい!」「きてよかった!」といえるものを提供できれば)誰でもコミュニティ運営をスムーズに行い、コミュニティを育てていくことができます。

また、ぼくたちのような、イベント運営、コミュニティ運営のプロの助けを借りて、より円滑に、効果的に運営を実施することも可能でしょう。

コミュニティを作ることがビジネスにプラスになることは、先のブログ記事にも書いた通りです。このような企業が増えているのは素晴らしいことですし、しっかりと目的、ゴールを設定し、プロセスを考えた上で、コミュニティの運営ができるようになると、企業とユーザーさんが手を取り合って面白い挑戦ができる世の中になってくると思います。ぼくが培っているノウハウが、皆様のコミュニティ構築の一助になれば、幸いです。