河原あずの「イベログ」

イベント屋・河原あず(ニフティ・東京カルチャーカルチャー)が、イベント、ミートアップ、コミュニティ運営で日々考えることを記録してます。

「もっと動員を集めるありき」のイベントはもうやめよう〜「精度」と「満足度」を考える

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茶ッカソンの様子(伊藤園さん撮影)

あるクライアントさんと商談をしていたときの話です。ぼくは、企業さんや自治体さんと一緒に「アイデアソン」と呼ばれるイベントをやることが多いのです。その代表格が、伊藤園さんとのコラボレーションとして、シリコンバレーで立ち上げた「茶ッカソン」で、今ではサンフランシスコ、シリコンバレー、ニューヨーク、シアトル、東京、京都、横浜、鎌倉などで、のべ700人近くのかたに参加いただいているコミュニティ色の強いアイデアソンシリーズです。

で、この「茶ッカソン」はクライアントさんとお仕事して、クライアントさんの新しい事業の活性や、問題解決のヒントを得るための場にしたり、商材のPRにつなげたりすることが多いのですが、とあるクライアントさんと話をしていたときに、こんな話をされたのです。

「あずさん、今回のアイデアソン(茶ッカソン)、たくさんの方に来ていただきたいんです。100名くらい呼べますか?」
「いや、呼べません。前の打ち合わせでお話したとおり、30〜40名が適正人数、多くても参加キャンセルも見込んで50名でいきましょう」
「告知が難しいのですか?」
「いえ、この企画内容であれば、100名をこえる応募はくると思います。けど、そこから抽選で、多くても50名に減らします」
「なぜですか?100名呼んだほうが、落選して悲しむ人も少ないし、場も盛り上がるのではないでしょうか?」

 
実際、あちこちのハッカソンやアイデアソンでは100名を越す人数で実施する企画もあります。それはそれでいいことなのですが、ぼくは、このクライアントさんの企画においては、大規模でやるのはそぐわないとはっきり思い、こうクライアントさんの担当・Cさんに説明しました。


「Cさん、この企画に大事なのは、「精度」と「満足度」なんです。今後の基礎をつくる初回の大事な企画ですし、まずはそこをつきつめませんか?」

まず企画の趣旨は、そのクライアントさんの商材に、今まであまり関心を抱いていなかった層に、関心を持っていただくことでした。そして、「ああ、この商材●●って面白い!!」と反応していただき、そして、のちにその会社のファンになっていただくことを目的としていました。まず、参加者の方々に、その商材についてしっかりインプットして、商材関係者のみなさんと対話していくプロセスが必要になります。人数が多くなればなるほど、その伝わり方は希薄になりがちですし「当事者意識」が醸成されづらくなります。

参加している方のモチベーションも重要になります。不思議なものですが、大人数になればなるほど、イベントというのは「サボり参加」も容易くなります。たとえば、参加してるふりをして、自分のワークに没頭したり。少人数だと、まわりの視線がより気になるのか、もっとイベントのコンテンツに没入できる環境になるのです。1/30より1/100のほうが、ひとりのもつ重さが希薄になる。冷静に考えればシンプルな話なんですけどね。

ここまでが「精度」の領域です。きちんと、熱狂させて巻き込むべき方々を適切に巻き込むための「精度」です。

……
さて、人数が増えると、イベント構成に大きな影響がでます。たとえばグループワーク。適正人数は5〜6人です。これが7人以上になると統率をとるのが大変になってきます。仕事でのチームもそうですよね? 7人をこえると、勝手なことをしだす人というのが、どうしてもでてくるのです(不思議ですねあれ。人間の本能みたいなものがあるんでしょうか)。けど、6人までなら、一体感が生まれやすいんですよね。

さらに、グループ数が増えると、発表の時間がのびることになります。聞きっぱなしの状況に陥ったとき、人間の集中力が続く限界は50分程度です。学校の授業1コマのサイズがそれくらいだったのは、たぶんそのためでしょう。1チームの発表が5分、そのあとの質疑応答に3分とった場合、1時間弱におさめるには、最大のチーム数は7チーム程度ということになります。ときどき10チームくらいでアウトプットのプレゼンやる場合ありますけど、あれは途中で休憩時間いれないと場の緊張感を保つのが難しいです。けど休憩いれると、それはそれで緊張感がそがれる。やはり、チーム数はコントロールしたほうがいいのです。

このあたりは「満足度」の領域になります。主催者のエゴでつめこみすぎると、結果的に参加していただけるみなさんの「満足度」が減ることにつながります。もちろん「精度」が高くなるほど「満足度」もあがりますから、このあたりは相互補完関係にあります。なので、片方をないがしろにするわけにもいきません。

……
これはワークショップの事例なので、講演会とかフェス系のイベントには関係ないや、って思う方もいるかもしれませんが、ぼくは根本は一緒だと思ってます。イベントのスタイルによって、適切なサイズってあるのです。その適切サイズをこえると、どこかで無理をきたして、結果、コンテンツと参加者のマッチングの精度が落ちたり(例:ターゲットの外の層がまじってノイズになる)会場運営的に行き届かずクレームに発展したりします。(例:ケータリングの食事が足りなくなった・営業目的の人間が混じってたが目が届かず放置してしまった)

収支的に、人を呼ばないと成り立たない、ということはもちろんあるし、そのバランスを考えるのもプロデューサーの仕事ですが、少なくともさらなる収益が見込める可能性がでてきたときに「追加のチケットをあえて売らない」という選択肢をとることも時に必要だとぼくは思ってます。

けど「人をあえて呼ばない」判断をするときの実はいちばんの理由は、この商談のときにクライアントさんが納得してくれた、この言葉に含まれてたりするんですよね。

「Cさん、100人きたときに、きた全員の顔を覚えて、全員と会話できる自信ありますか?」
「うーん…正直…100人は厳しいですね。」
「じゃあ、40人なら、どうでしょう?学校の1クラスくらいです。」
「ああ、それくらいなら…なんとかがんばれますね!」

 
お客さんひとりひとりの顔をみて、関係性をつくっていくのが、コミュニティ系のイベントにおいて最も大事なポイントです。数百人と人を集めている「コミュニティのイベント」というのも世の中にはなんと存在するのですが、それって主催者も全員の顔なんて把握しきれてないのではないでしょうか。


けどぼくは思うんです。顔の見えない状態のコミュニティは結局、コミュニティではなく「マス(群衆)」と一緒なんですよね。

動員を頑張るな、とは言いません。もちろん、動員はイベントの要です。けど「より多くの動員」ありきのイベント計画をもし書いている方がいたら、いったん、一呼吸おいて、見直してみるのも、いいかもしれません。目的は何か、なぜやるのか、どういう人たちをどういう状態にするのがゴールか。それが見えると、おのずと、どういう環境をつくるのがベストなのかは見えますし、適正な動員サイズも見えてくるものです。KPIは動員数!っていうイベントも多いかもしれないですが、ゴールと目的と照らし合わせて目標値も設定していくのがいいのではないかなと思います。

※実はこのクライアントさんは架空です。複数の商談のエピソードを組み合わせたフィクションです。最後の最後にすみません。つつしんで追記させていただきます。