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河原あずの「イベログ」

イベント屋・河原あず(ニフティ・東京カルチャーカルチャー)が、イベント、ミートアップ、コミュニティ運営で日々考えることを記録してます。

「鬼十則」の時代から「利休七則」の時代へ。〜茶の教えが伝える場づくり7つのポイント。

コミュニティ アイデアソン 司会・ファシリテート

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千利休が茶道の教えとして残した「利休七則」に、これからの時代の働き方の大きなヒントが隠されています。

伊藤園さんと開催している「茶ッカソン」で毎回、来場された方に伝える、グループワークを円滑に進めるための「7つのポイント」があります。それが「茶ッカソン流・利休七則」です。

「利休七則」とは茶人・千利休がまとめた茶道の基本である「おもてなしの心」を体現した言葉です。

一、茶は服のよきように点て

二、炭は湯の沸くように置き
三、花は野にあるように生け
四、夏は涼しく冬暖かに
五、刻限は早めに
六、降らずとも傘の用意
七、相客に心せよ

 もともと弟子に「茶の湯とはどのようなものですか」と問われたときに、このように利休が答えたところが発祥だそうです。弟子はそれを聞いて「それくらいのことなら、私もよく知っています」と答えたところ、利休は「もしできているのなら、私があなたの弟子になりましょう」と答えたという逸話も残っています。シンプルでありながら、実際に形にするのが難しい、おもてなしの心の奥深さを物語るエピソードです。

この七則を読んだときに、ぼくは「この7つの教えは、ハッカソン、アイデアソンなどのグループワークや、みんなで場を創るにあたって、とても大事な考えなのではないか」と思い立ちました。シンプルな言葉の中に、コミュニティづくりの粋が詰まっているのです。早速、草案を、一緒に茶ッカソンのファシリテーションをしている、タムラカイくんと、伊藤園の角野さんにシェアをし、タムラくんの編集を経て「茶ッカソン流・利休七則」は完成しました。

そして、この「利休七則」をイベントで繰り返すうちに、この考え方が、コミュニティづくり、イベントづくり、場づくり、はては、いろいろな方とチームで仕事をする際に最も重要な根幹なのでは?と思い至りました。


思い至ったきかっけは、この「利休七則」のことを茶ッカソンで発表したときに、毎回茶ッカソンに畳を協賛して頂く北一商店の松永さんがこんな一言を、ふと残したことです。

電通さんの鬼十則の時代が終わって、利休七則の時代が来ているのかもしれないですね」

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不幸な事件が起きたことがきかっけで、電通の象徴だった「電通鬼十則」が2017年度から社員手帳から削除される事態に発展したことは、記憶に新しいところです。鬼十則は、モーレツに働く電通マンの象徴であり、数多くのビジネスマンにも引用され、関連書籍も多数発行されました。電通の四代目社長の吉田秀雄氏が部下に対して発信したのが発祥です。曰く、このような中身です。

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

 この十則、いいことを言っているポイントもあって、個人的には嫌いではないのですが、ひとつ気づかされるポイントがあります。それは、この十則の主語が「自分自身(おのれ)」であることです。

しかし様々なアイデアソンや、コラボレーションイベントを開催したり、コミュニティをつくったりして思うことは「己を主語にして仕事を語る時代は、終わろうとしている」ということです。

仕事は、自分で創るものではなく、他者と創り、他者と形作るものになっています。少なくとも「周囲をひきずりまわす」ような会社はどんどん嫌われます。むしろ、周囲と連携して何かを起こせる会社や個人が評価される時代になっています。

「モーレツ」という言葉が流行ったような高度経済成長の時代には、鬼十則は、仕事に勢いをつける意味でも貢献したのでしょう。それは否定しませんし、部分的に残っていい要素もあると思います。しかし、今の時代によりフィットするのは、他者を思いやり、お客さんの気持ちに寄り添う「利休七則」なのではないかと、日々思うのです。

以下「利休七則」を茶ッカソン流に翻案した内容を説明します。特に茶の湯に例えると「客人」を迎える「主人」であるイベントオーガナイザーやコミュニティマネージャー、ファシリテーターにとっては、とても役に立つものです。これが皆様の場作りや仕事に、少しでもいいヒントになれば幸いです。

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茶の湯に例えると、ファシリテーターは「主人」。おもてなしの心を持って、場づくりに臨む必要があります。

一、茶は服のよきように点て (自分の理想以上に相手の気持ちを考え)

「服」とは「飲む」こと自体を指します。客人を迎えた主人が、お茶をたてる際に、飲む客人の気持ちにたってお茶をたてなさい、という教えです。

これを茶ッカソンでは「自分の理想以上に、相手の気持ちを考えなさい」という言葉に置き換えました。

場づくりにおいては基本であり、特に重要な教えです。オーガナイザーが自分の都合にあわせて場づくりをしていては、お客さんにとって居心地のいい空間は生まれません。オーガナイザーはいつでもお客さんの気持ちになって、目を配り耳を配り、柔軟に場を仕切っていく必要があるのです。

また、クライアントとのコラボイベントの企画でもこの教えは役立っています。クライアントの悩みの本質に寄り添うために、たくさん話を聞いて、自身の持っているものやアイデアを組み合わせて、どのような解決策を提示できるのかを、一体となりながら考えていく必要があります。

二、炭は湯の沸くように置き (結果だけでなく準備・段取りにも気を遣い)

お茶を点てる際に、炭に火をつけておこすのですが、このプロセスは1つ間違えるとなかなかうまくいきませんし、配置や注ぎ方にも気を配る必要があります。

最適な結果を導くには、正しいプロセスを意識して、準備をし、段取りをすることが必要ですよ、という教えです。

グループワークにおいては限られた時間でアウトプットを創ることの焦りから、肝心な要素をすっ飛ばしてしまったり、ある要件を無視してしまったりすることも起こりがちです。結果を創るためには、プロセスを見つめ直すことが大事だよ、ということを、茶ッカソン流・利休七則では伝えています。

ファシリテーションは準備が9割」という言葉をあるファシリテーターの方がおっしゃっていたのですが、まったくその通りです。準備の段階から場づくりやオーガナイズは始まっているのです。

三、花は野にあるように生け (課題・アイデアの本質を常に意識して)

茶室には花を飾りますが、その花の生け方は「自然にあるように生ける」のが基本なのだそうです。その花が、野にある際の、本質的な美しさを損なわず、むしろそれを引き出すように活けなさいということを利休さんは述べています。

茶ッカソンにおいては「課題・アイデアの本質を常に意識しましょう」と翻案しています。課題がでたときに、その課題の本質はどこにあるのか。また、アイデアを出す時に、そのアイデアはその課題の本質にどのように作用するのか。それをしっかり見据えるのが大事です。

面白いアイデアは、出した時点で満足してしまい、それ以上掘り下げずに終わってしまうこともよくあります。そうではなくて大事なのは、アイデアの表面ではなく、深層を一度掘ってみて、その本質が生きるアウトプットを作り上げることです。

場をつくる仕事においても、本質を見据えることの重要性は言うまでもありません。

派手なアイデアを並べることは、実は場づくりの本質とは何の関係もありません。

例えばイベントの企画づくりでも、演出をそのイベントのテーマがあぶり出すための仕掛けとして考えますし、無駄な演出は、一見面白みがあるものでもカットします。コラボイベントでも、クライアントさんの課題の本質をしっかり見据えるのを怠っては、いいイベントは出来上がりません。常に、一段二段と深堀りしながら考えるように、自分自身は仕事の際に癖をつけています。

四、夏は涼しく冬暖かに (みんなでよい雰囲気をつくるために気配りし)

空調がない時代、夏暑いときは打ち水をして涼を誘い、冬寒いときは暖かいお菓子を出すなどして、客人が少しでも快適にその場をすごせるよう、その季節にあった気配りを欠かさなかったそうです。

茶ッカソンでは「いい場を創るために、みんなで気配りをしよう」と翻案しています。暑くなったら冷房の温度をそっと下げにいくように、その場の空気や状況に応じて、自分ができる気配りを尽くしましょう、という考え方です。

コミュニティやイベントのオーガナイザーにとって、場の状況を見ながら臨機応変に最適な環境を整えることは、必要な行動です。ぼくは自分のイベントだと、お客さんの反応をじっと見ながら、こうしたほうがいい!と判断した時には、プログラムの内容を変えてしまうこともあります。そしてすべての起点は、お客さんが快適に過ごせているかどうか、です。常にお客さんに対する気配りを意識することが大事です。

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五、刻限は早めに (時間に余裕をもって行動、どんな時も焦りは禁物)

時間を意識しましょう、ということですが、その理由が重要です。余裕を持って行動することで生まれる、心の余裕こそが、おもてなしの心を生むという教えなのです。

限られた時間で実施される茶ッカソンのグループワーク。時間を意識するのは大事ですが、それ以上に大事なのは「余裕を持つ」こと、「焦らない」ことです。

少し焦っているな、と感じたら深呼吸をしたり、少し議論を止めたりしながら、心のゆとりを取り戻す必要があります。

イベントも、タイムテーブルをもとに動きますが、できるだけ余裕を持って進行するのが大事です。スタッフの焦りはすぐにお客さんに伝わります。焦りが伝わるととたんに、お客さんの快適さが損なわれますし、スタッフ側からもおもてなしの心が吹き飛んでしまいます。準備はマキで行う、早め早めで動き、何が起きてもゆとりを持てる状況を常に創るのが大事です。

六、降らずとも傘の用意 (不慮の事態に備え、チームで助け合い)

この場合、傘はたとえで、不慮な事態への備えを常に意識しましょう、という教えです。

茶ッカソンにおいて大切なのは、不慮の事態が起きた際に、チームでフォローすることです。トラブルは、チームワークが最も試される試金石で、これを乗り越えると、チームの結束は増し、よりよいアウトプットへと結果つながっていくのです。何かが起きたときに、誰のことも責めず、どうリカバリーできるかを一緒に考えるのも、円滑なグループワークには大事です。

「場」すなわちイベントやコミュニティは1人ではつくれません。みんなでつくるものです。場はナマモノなので、不測の事態は、必ず起きます。その際に、スタッフや、参加している人たちがどのように対処していくかが大事です。

また、この心が、チームで仕事をする際に共通の、最も重要なポイントだということは言うまでもないでしょう。

七、相客に心せよ (この場にいるすべての参加者に真心を)

相客とは、その場に参加した客人のこと、心せよ、とは、気を配りなさい、ということです。茶ッカソンでは「この場にいるすべての参加者に真心を」と翻案しました。

場づくりにとって大事なのは、利己的になることではなく「利他の精神」をベースに動くことです。この場に来ていただき、お金を払い、一緒の時間を過ごしてくださることに感謝をし、この場を楽しんでいただけるよう、真心を持って接するようにします。

また「一期一会」の精神もまた大事です。あるイベントがある際に、まったく同じ面子が、同じ空間に集まることは、二度とないのです。その1分1秒の時間を大事にし、ひとつひとつの出会いに感謝をし、その事実に敬意を持つこと。それが、参加者ひとりひとりへの真心につながります。

参加してくれるスタッフやスポンサーさん、ゲストさんとも、もちろん真心を持って感謝の気持ちで接する必要があります。結果として、参加するみんなが一体となって素敵な場をつくろうという気持ちが、自然と醸成されていくのです。

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この7つのポイントを読み返すと、実はこの「茶ッカソン流・利休七則」が、普段チームで仕事をする上でもとても普遍的なことを語っていることに気づかされます。

そして、この考え方は「共創」や「オープンイノベーション」がバズワードになり、スタートアップや大企業が手を取り合ってビジネスを作り上げる今の時代において、ますます重要性が増している考え方だと思うのです。

鬼十則」で語られてるように、意識を高く持ち、他を蹴落とそうという勢いで、モーレツに働くスタイルも、それはそれでアリなのかもしれません。しかし、結果、どんどん仕事が利己的になり、利他の精神が失われることで、さまざまな歪みが生まれる事例もたくさんあります。電通さんの事件は、ある種、その象徴的な出来事だったと言えるのかもしれません。

お客さんや、周囲の方々に寄り添い、一緒に考えて、ひとつの成果を作り上げていく。そんな時代において、千利休が残したこの七則は、大きな意味を持っています。仕事につまったら、この七則を見返してみて、ゆとりを取り戻し、利己的になりつつあった自分の気持ちをときほぐすと、いいのかもしれません。

もうひとつ付け加えると、「利他の精神で働く」のと「お客さんの言われるがままに働く」のはまったく別のことです。前者はコラボレーションで、後者は「受託」ですね。

利他の精神で何かを創り上げる時には、プロフェッショナルとしての姿勢や、主体性がとても重要になります。お客さんが「こうしたい」という要望をあげてきたとき、それが本質に見合うものかどうかをきちんと判断する必要があります。お客さんの課題の本質を見据えて、プロとして、何をすべきか判断する必要もあります。利他の精神がベースになる世の中だからこそ「先手先手の仕事」ができるようになります。実は、鬼十則の語るプロフェッショナルの精神のようなものは、利休七則とめぐりめぐって重なる部分もあるのです。

ただ、ぼくもまだまだ不十分だなと、この記事をまとめてみて思います。利休さんのような方も「私もできていない」と弟子におっしゃっていたとおり、この七則にゴールはなく、完璧に満たされることはないのです。だからこそ掘りがいのあるテーマですし、一生大事にしたい言葉だな、と思えるのです。

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okanenight.peatix.com

 

「マルサン・コミュニティの法則」でコミュニティづくりはうまく行く!〜コミュニティ構築3つのポイント

コミュニティ ミートアップ 動員・集客

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「マルサン・コミュニティの法則」は、円滑なコミュニティ構築の肝になる大事な概念です。


「ファンコミュニティづくりをしよう!」と決意し、イベントを開催する企業さんが増えています。ハッカソン、アイデアソン、ワークショップ、試食会、試飲会などなど、形はさまざまですが、従来の「名刺を集める」ことを目的とした対ビジネス向けのイベントではなく、対消費者向け、ユーザーさん向けのイベントを開催する事例が増えてます。

また、新規事業関係者を集めた、ノウハウ共有やネットワークづくりを目的にした「同業者コミュニティ」づくりも盛んです。何百人と新規事業に携わる方が集合し盛り上がっているイベントの写真が頻繁にソーシャルメディアに上がったり、マスメディアに取り上げられたりしています。

しかし、イベントを重ねることが、コミュニティづくりに寄与しているかというと、正直なかなかうまくいかないケースもみられます。極端に言うと「イベントをやって、人を集めて終わり」というケースが多々あるように思うのです。

人をたくさん集めれば、なんとなく「盛り上がりのあるコミュニティ」が存在するように見えます。しかし、それが、しっかり育つようにデザインされたコミュニティかというと、そうでないケースが多いように見えるのです。

結果、増えるのは「人を集めて打ち上げ花火をあげ続けることにフォーカスした自称・コミュニティ」です。

たくさん人を集めれば、あるいは、何度も繰り返しイベントをやれば、コミュニティが育つというものでもありません。

しかし、コミュニティ構築にあたり、たった3個のポイントをおさえることで、誰でも、ハードル低く、ファンコミュニティや、同業者のコミュニティを、きちんと育てていくことができます。

コミュニティ構築のヒントになるのは、以前取り上げた「ミートアップ」の考え方です。ミートアップは、本場・アメリカでも、特別な才能を持っている人が実施しているわけでもなく、多くは「一般の人」がオーガナイザーになっています。そして、それぞれのコミュニティベースを育てているのです。つまり、誰にでもできることなのです。いくつかのポイントさえおさえれば。

ミートアップの考え方は、企業の周辺コミュニティ構築・運営においても、とても有効な、普遍的なものだと個人的には思います。サンフランシスコやシリコンバレーで、多くの企業が中小のミートアップを主催したり、協賛したりしているのはそのためです。自社のファンを増やしたり、仲間を増やしたり、数々のメリットを企業はコミュニティを構築することで得ています。

そのエッセンスを日本企業もイベントづくりにも取り込むことで、より活性化したコミュニティを育てることができるのです。

ぼくの場合は、主にこの考え方を、伊藤園さんと開催しているプロモソン「茶ッカソン」や、サンフランシスコでの日系コミュニティの活性化(新規事業コミュニティ「SUKIYAKI」や「J-POP SUMMIT」関連の取り組みなど)のために生かしてきました。実際、さまざまな人が行き交って、新しい出会いや発見のあるユニークな場所が作れていますし、この考え方を応用した場づくりが、コミュニティづくりの新しいトレンドになっていくのではないかと感じてます。

以下、ミートアップのエッセンスを取り入れた「企業関連イベントを通じたコミュニティ運営の秘訣」をご紹介します。

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立ち上げから関わっているシリコンバレー新規事業支援コミュニティ「SUKIYAKI」の勉強会の様子


1:集めすぎない

1つ目のポイントは「人を集めすぎない」ことです。

コミュニティ育成のポイントは「参加者すべてが顔をつきあわせながら、同じテーマを共有する」ことです。たとえばミートアップは、対面のコミュニケーションを重視することで、コミュニティを育てます。同じテーマに課題意識や興味・関心を持つ人が集まって、議論をしたり、一緒に場作りをするのが、ミートアップ的コミュニティの特徴なのです。

しかし「参加者ほぼ全てと対面でコミュニケーションをとれる人数」には限界があります。体感でいうと、多くて70人、イベント興行にすることも踏まえた上での適正人数でいうと、30〜50名といったところです。

コミュニティを育てることに主眼を置くのであれば、その「対面コミュニケーションが成り立つ適正人数」を踏まえて、集客しましょう。

200人、300人規模の「自称・コミュニティイベント」もあるように見えますが、正直な感想を言うと、その規模感のイベントは、単なる興行、パーティの域を出ることはありません。コミュニケーションを重視するイベントと、大勢を集めるイベントは、イベントづくりの考え方、構造がまったく異なりますし、300人集めて「コミュニティが育ってる!」と言っても、それは無理があるように思えます。

ただし、コミュニティベースが育った段階で、同窓会的に200人、300人集めるのは、それはそれで「勢いや成長を体感する」という意味で、コミュニティの活性に意味があります。コミュニティを育てていくバランスとしては、30〜50人規模のイベントを年に3〜6回、100人強のイベントを年1回くらいやるのが、ちょうどいい塩梅のように個人の経験からは思います。

イベントの動員についての考え方は以前も記事を書いたので、こちらもご参照ください。

azkawahara.hatenablog.com


2:「マルサン・コミュニティ」の法則。

この法則は、ぼくが編み出した法則ですが、コミュニティ構築においては重要な、肝になる仮説になっています。意識しだして数年ですが、今のところ、うまく動いているように思います。

1にも関わる問題なのですが、回数を重ねるごとに、イベント参加経験者は増えていきます。そして、動員を考えると、参加した人には何度も参加してほしいし、興味を持ってくれた新しい人にも来て欲しい。結果、常連さんも一見さんも増えて、どんどん動員が膨れ上がってくることがあります。

これをオーガナイザーが見たときに「やった!コミュニティが成長している!」と思うのかもしれませんが、動員が増えれば増えるほど「お互いのコミュニケーションやコミットメントが希薄化する」というジレンマが生まれます。

ジレンマに気づかずに、動員増を喜ぶオーガナイザーもいると思いますが、200人程度の規模を超えた段階で、コミュニティは変質していきます。大抵は、大きなイベントなどに様変わりして「アソシエーション」のような権威づけがされるか、体力が続かずに消滅や分裂をするか、どちらかです。

ではどうすればコミュニティを育てられるか。ぼくの考えを実体験からまとめたのが、下の「マルサン・コミュニティの法則」です。

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「3つの丸でコミュニティを捉える」これがマルサン・コミュニティの法則の肝になります。

コミュニティを3つの母体(すなわち3つの丸)にわけます。毎回くる、もしくは運営にコミットする「コア」(マルイチ)、数回に1回くる「常連」(マルニ)、そしてはじめてきた「新人」(マルサン)です。

大事なことは、イベント毎でのこの3つのカテゴリのメンバーの割合の設定です。イベントに際しては、この3つの丸が「およそ1対1対1」の人数で来るように調整します。調整といっても、きちんとこの割合で集客を計算してやるのは不可能ですから「声かけの際に意識する」というレベル感でおさえるといいでしょう。

50人程度のイベントを想定すると、三等分した際の人数はおよそ16人程度です。これをベースに、コミュニティも設計します。

1つ目の丸(マルイチ)、毎回くるような「コア」メンバーの人数は、最大で15〜20名程度が適正ということになります。逆に言うと、毎回誘う人の人数や、活動にコミットする運営サイドの人数は、それくらいにまでしぼっていいということです。なぜかというと、その人数が多すぎると、コミュニティの文化を維持するのが難しくなるのと、内輪の集まりの色合いがどんどん濃くなってしまうからです。

2つ目の丸(マルニ)の「常連」さんには、数回に1回声がけします。彼らには、コミュニティへのコミットメントは特に求めず、彼らが興味を持ってくれたテーマのときや、タイミングがあったときに来てもらいます。一芸に秀でた人や、常に新しいことを探索して持ち帰ってきてくれる方が「常連」層には、ハマります。

そして3つ目の丸(マルサン)の「新人」さんを手厚く、それぞれの層と同じくらいの人数を呼びます。そうすることで、イベントのマンネリ感を防ぎ、コミュニティに新しい風を吹き込みます。コアと常連だけのコミュニティはどんどん内輪な集まりになってきてしまう危険がありますが、新しい人たちが常に入り込んでいくことで、コミュニティの文化はどんどん変化し続けることになります。

もちろん「新人」は、コミュニティにはまれば、新しい「常連」の1人になってくれる(「マルサン→マルニ」の移行)でしょう。このバランスを意識することで、コミュニティに参画している人数「コミュニティ・ベース」はどんどん人数を増やして、厚くなっていきます。たとえば「茶ッカソン」の場合は、日本では200人弱のベースがあります。

「コミュニティ・ベース」の人数は増えても、1回のイベントに呼ぶ人数はコントロールして、50人程度におさめるのが大事なポイントなのです。そのバランスがうまく作れると「コア(マルイチ)がコミュニティの柱を担い」「常連(マルニ)が場のエンジンになり」「新人(マルサン)がフレッシュなアイデアや人脈を持ち寄る」という、理想的な場が運営できます。

大事なのは「コア」と「常連」は、役割の違いであって、ポジションの優劣はないということです。声かけの際に、自分が毎回呼ばれないことに不満を覚える「常連」さんがいたら、意図を説明したり、必要あれば、「コア」への参画をうながすのもいいかもしれません。人を呼ぶことではなく、このバランスをとってチューニングしていくのが、コミュニティマネージャーの大事な仕事なのです。


3:来る者は拒まない、去る者は追わない。


コミュニティの本質は「出入り自由」であることです。オープンであること、フラットであることが求められます。

「新人」の概念で書いた通り、来る者は拒まず受け入れます。新しい人を受け入れないコミュニティは硬直していきます。そのため、イベントにおいては、「コア」や「常連」が「内輪な空気を出さない」ことが重要です。「常連」の特別扱いもしないようにします。特別扱いをするべき対象は常連や新人に限らず「コミュニティに対する貢献を的確にその場でしてくれた方」です。

しかし一方で「去る者を追わない」のも大事です。新しく来た方が「あれ?ちょっと違うな?」と思ったら、二度目以降くることはないでしょうが、それはあえて、追わないようにします。自分の目的意識とあっていないということなので、無理やり次に呼んでも、同じような違和感を覚えられるでしょう。

「去る者を追わない」については「常連」や「コア」においても同様です。そして、あまりに去る者が多い状況は、コミュニティがうまくまわっていないことの証左なので、しっかりと運営に参画している「コア」メンバーで検証する必要が出てきます。問題意識やテーマ設定、主催者の意図と参加者のモチベーションにズレが生じている可能性があります。これをきちんとチューニングしていく必要が出てきます。

「来る者拒まず、去る者追わず」が原則ですが、例外もあります。コミュニティの秩序を崩すような方がいる場合です。こういう方がいる際は、その場やコミュニティから、お引き取り頂く勇気は、時に必要です。


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ここ数年、企業によるファンコミュニティづくりが流行しています。マスコミュニケーションを軸とした宣伝やブランディングが徐々に力を弱める中、ユーザーさんとの「エンゲージメント」を創ることで、新しいマーケティングをしていこうという意図でしょう。インフルエンサーを獲得し、そのひとたちにプロダクトや企業の魅力を拡散してもらう、というトライをしている会社もあります。

ところが、ファンコミュニティを創る、といっても、なかなかうまくはいきません。それもそのはずで、そもそも企業のほとんどの方は「ファンコミュニティを創る」という仕事をしたことがありません。

上司から「もし、最近、ファンコミュニティを創ってプロダクトをマーケティングしていくアンバサダーマーケティングとかなんとか流行ってるらしいな。うちもそういうのやらんのか」と振られても何をしていいのか見当つかず、まず何をするかというと、大抵、イベントをやり、人を集めます。

オープンイノベーションの重要性が叫ばれる中「新規事業担当者コミュニティ」も多数生まれています。しかし「オープンイノベーションというのがあるらしいな。コミュニティが大事らしいじゃないか。弊社もコミュニティからのオープンイノベーションをやるように」と上司から言われた人もまた、ビジネスづくりはやったことはあっても、コミュニティの運営に携わったことがないケースがほとんどです。とりあえず、イベントをやり、人を集める、を繰り返します。

両者は、たくさんのイベントを繰り返し、徐々に疲弊し、時に上司に「コミュニティはできているのかね?」と問われた時に、はたとある時点で気づくのです。

「何のためにイベントをやっているのだろう」「コミュニティは本当に、できているのだろうか」

ポイントや目的意識がずれたままイベントをただ繰り返すと、このような不幸を呼びがちです。

しかし、ぼくが書いたようなポイントさえおさえれば(そしてもちろん、参画してくれる参加者の皆様に対してきちんと「楽しい!」「きてよかった!」といえるものを提供できれば)誰でもコミュニティ運営をスムーズに行い、コミュニティを育てていくことができます。

また、ぼくたちのような、イベント運営、コミュニティ運営のプロの助けを借りて、より円滑に、効果的に運営を実施することも可能でしょう。

コミュニティを作ることがビジネスにプラスになることは、先のブログ記事にも書いた通りです。このような企業が増えているのは素晴らしいことですし、しっかりと目的、ゴールを設定し、プロセスを考えた上で、コミュニティの運営ができるようになると、企業とユーザーさんが手を取り合って面白い挑戦ができる世の中になってくると思います。ぼくが培っているノウハウが、皆様のコミュニティ構築の一助になれば、幸いです。

 

アイデアソン進化論。〜つながりをつくり育てる「プロモソン」のススメ。

コミュニティ 企画書 アイデアソン ハッカソン プロモソン

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座禅ではじまる「茶ッカソン」。そこに、新しいアイデアソン進化形の、ヒントがありました。


ちょうど昨日(2017/2/4)から高知県高知市で「アイデアソンサミット2017」というイベントが開催されています。ぼくも誘われたものの所用で行けなかったのですが、参加者の方から伝わってくる議論の内容はとても興味深いものでした。

その中で、ハッカソン・アイデアソンを多数開催されているフィラメントの角勝さんから、こんな問題提起があったと聞きました。

「アイデアソンはアイデアを出すより、つながりができることが価値です。アイデアソンの価値の再定義をする時期にきているのではないでしょうか。アイデアソンの名前も変えるべきかもしれない。」


これを聞いたときに、さすが角さん、と、思わず膝をうちました。ぼくもまったく同じことを考えていました。というか、最初にアイデアソンを企業さんとやりだした頃から「アイデアソンの再定義」に取り組んでいたことに、去年の11月に気づいたのです。

自分の仕切るアイデアソンが、実はアイデアソンの枠をはみだしていることに気づいたぼくは、そのフォーマットに、まったく新しい名前をつけました。

その名も「プロモソン(Promo-thon)」。Promotion + Ideathon で、プロモソン。アイデアソンの進化形と、個人的には位置付けています。

プロモソンとは何か。一言で言うと「企業とお客さん、ファン同士の関係づくり=ファンコミュニティの醸成」を第一目的にすえた、企業プロダクトを新しい世界観でブランディングする、アイデアソン型の新感覚エンターテイメントです。

今までぼくは、2種類の「プロモソン」を開発してきました。ひとつは伊藤園さんとの取り組みである「茶ッカソン」。もうひとつが、いいちこでおなじみの三和酒類さんとの取り組み「いいちこらぼ」です。

この2つのアイデアソンをつくる上で、ぼくが最重要視したのは「新しいイノベーティブなアイデアの創出」では実はありませんでした。そうではなくて来場される40〜70名のお客さんのひとりひとりが主人公になり、ぼくらがつくった世界観に没入できる「参加型エンターテイメント」であることを目指して、作り上げたのです。

結果、何が生まれたか。それは「継続性のある主催企業とファンの関係づくり」です。いいちこらぼは、2016年の6月に初回開催され、2017年春には第3回を開催の予定です。茶ッカソンに至っては、2014年4月以降、サンフランシスコで8回、東京でも10回開催されている他、ニューヨーク、シアトル、京都などでも開催されてます。

このように、企業が消費者の方とつながることで何が生まれるか。それは以前ブログで紹介した「弱い紐帯(ちゅうたい)」すなわち「ファンとしての帰属意識に裏打ちされた企業の周縁のゆるいつながり」です。審査員やスタッフも含む参加者の中には、業界のキーマンや、独自のスキルやネットワークを持ったかた、関連ビジネスを実施している方など、さまざまな方がいます。彼ら、彼女らとのつながりを定期的に温めることにより、ふとしたきっかけで新しい情報がもたらされたり、新規性の高いアイデアが舞い込んだりします。

その際、大事なのは「この会社が、このプロダクトが、何よりこの会社にいるひとたちが好きだ!!」と、参加者のみなさまに強く思っていただくことです。

そんな場をつくると、結果的に、出てくるアウトプットの質も上がるから不思議なものです。人間の発想の源は「環境」と「気持ち」です。非日常感は脳の動きも活性化させますし「楽しい」という気持ちは、グループワークへの前向きな取り組みにもつながってゆきます。会社やプロダクトへのエンゲージメントを高めた状態で、エンターテイメントとして成立している場を作れば、当然、でてくるアイデアの質も向上してゆくのです。

そのような場をつくりあげるために、ぼくがプロデュースするプロモソン「茶ッカソン」や「いいちこらぼ」では、以下の3つのポイントを意識しながら企画だてをしています。みなさんもぜひ、プロモソンを実践してみてください。より精度の高い、企業に新しい価値をもたらすコミュニティづくりが、たったこれだけのポイントを意識して、アイデアソンをアップデートすることで、可能になるのです。


1:アイデアソンにありがちなKPIをいったん忘れる

プロモソンにおいてKPIにするべきなのは、企業がアイデアソンやハッカソンのKPIとしがちな「たくさんの人数を呼ぶこと」でも「たった1日や2日のグループワークで革新的な新規事業のアイデアをひねりだして企業内で実践した回数」でもありません。むしろこれらのKPIのことを「いったん忘れて」会のゴールをしっかり再設定することが大事です。

「プロモソン」では「その企業プロダクトを、参加してくれた皆さんの中の"物語"に組み込むこと」をゴール(目的)とします。そのひとたちに非日常体験を与え、日常に戻ったときにも、その企業のことやプロダクトのことを無意識に考える状態をつくりあげます。また、帰ってくるリピーターを受け入れ、また、新しくやってくる仲間を迎えるためにも、定期的に開催することが推奨されます。KPIにすべきは、開催頻度であり、その場の参加者すべて(お客さん、審査員、ゲスト、クライアント、スタッフ)の満足度です。

プロモソンとは、短期的な新規事業開発の手法ではなく、新しいプロモーションの手段であり、マーケティングブランディングの新しい形です。企業からの押し付けでプロダクトをつくるのではなく、また、企業から「新しいビジネスをつくりなさい」というお題を押し付けられることもなく「一緒に場を創る」という作業をくぐりぬけることにより「いつのまにかその企業やプロダクトのファンになる」状態をつくりあげ、「一緒にプロダクトや企業を育てる仲間」を増やします。その仲間のひとりひとりが、今度はインフルエンサーとなって、新しい仲間を連れてくる状態をつくるのです。

だからぼくはクライアント企業に「アイデアソンの運営はぼくらにまかせていいので、とにかく来場されたみなさんとコミュニケーションとって仲良くなってください!」と言います。その外とのつながりが、中長期的にみたときに、企業に大きな利益をもたらしてくれるのです。


2:「世界観」をつくり、参加者を物語の主人公にする。

ぼくが、2014年に伊藤園さんと「茶ッカソン」をシリコンバレーではじめた際に、もっとも参考にしたイベントがあります。それは、他の人たちがやっているハッカソンやアイデアソンではありませんでした。なにかというと…

「リアル脱出ゲーム」です。

2008年の東京初上陸の際にはじめて体験したリアル脱出ゲーム。SCRAPという会社が主催し、今や、世界中で人気の参加型エンターテイメントです。ぼくは、何度も参加して夢中になった「リアル脱出ゲーム」の中に、新しいアイデアソン構築のヒントを見出しました。

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「プロモソン」は、リアル脱出ゲームをヒントに生まれました


リアル脱出ゲームは集まったお客さんを「ある密室に閉じ込められた」という設定の中に追い込み、謎を制限時間内に解かせ、すべての謎が解けたら「脱出成功」となります。


リアル脱出ゲームの面白さのキモは以下の手順を踏んで、お客さんをゲームの世界に没入させるところにあります。

「世界観の構築」(ロケーションや商材を選定し、それにふさわしい設定をつくる)
→「物語の世界へのスイッチ」(「あなたたちは閉じ込められました」という一言。ミッションを与えて、スタート)
→「制限時間ある中での共同作業」(制限時間で執拗なストレスが与えられるグループでの謎解き)
→「脱出成功の歓喜と、脱出失敗の絶望」(最後の最後に成功者を明らかにし、緊張からの歓喜を呼び込み、脱出失敗した人たちとのコントラストをつくる)



そして、ぼくは伊藤園さんとアイデアソンをやろう、といったときに、このリアル脱出ゲームの演出要素を、次のようにアイデアソンに置き換えたのです。

「世界観の構築」(「現代版茶会」という設定に即した千利休などお茶の歴史と哲学のインプット。お茶とともに有名スタートアップのオフィスでワークすることによる「クリエイティビティ・Creativi-TEA」の刺激)
→「物語の世界へのスイッチ」(座禅や抹茶、煎茶体験。ロケーションや商材にあわせたミッション(お題)の発表)
→「制限時間ある中での共同作業」(制限時間で執拗なストレスが与えられるグループワーク)
→「プレゼン後の受賞の歓喜」(最後の最後に優秀者を明らかにし、緊張からの歓喜を呼び込み、参加者全体の中でコントラストをつくる)


特にプロモソンにはあって他のアイデアソンやハッカソンにはあまりない大事な要素は、導入部分にある「世界観の構築」と「物語の世界へのスイッチ」です。茶ッカソンでは数を重ねる毎に、主催の伊藤園・角野賢一さんと一緒に、試行錯誤して、これをどう作り上げて、参加者のみなさんを没入させるかという命題に取り組んできました。その結果、現在は毎回開催している「座禅」をグループワークの前に取り入れたり、畳をあらゆる会場に敷きつめて「非日常空間」を演出する現在の方法に落ち着きました。たとえば、渋谷ヒカリエ六本木ヒルズの49階に畳を敷き詰めたりします。これは効果てきめんで、来た瞬間に参加者の方の気持ちはあがり、コンテンツへの没入感が増します。

これを行うことで、参加者の方々は、メタな世界の主人公として、演じ振る舞うことが可能になります。茶ッカソンにおいては「現代版茶会の参加者」であり、いいちこらぼにおいては「知的バー空間にやってきたお客さん」という設定の中、参加者は振る舞うのです。そして、初対面の方とチームを組んで「お題に応じたプレゼンをつくる」というミッションをこなします。

プレゼンの発表の後は、ドラムロール、表彰BGMなども含め、きちんと演出された表彰を行うことで、歓喜の輪をつくります。賞をとったひとは、その喜びがかけがえない思い出となりますし、選を漏れたひとたちは、次こそはあの歓喜の輪をつくりたい!という思いで、再び参加してくれます。

衣装や小道具も大事です。テーマにあわせて小道具を用意したり、ワークをオリジナルでつくったりします。茶ッカソンでは毎回ぼくは、作務衣をはおって登場します。「知的バー空間」というコンセプトのいいちこらぼでは、スーツで登場しますし、バーカウンターでは常にバーテンダーにシェイカーをふってもらい、アイデアソンを促進するカクテルをグループにサーブし続けます。ひとつひとつの演出が、参加者のプロモソンへの没入感を左右するのです。

また、もちろん、ワーク本編のファシリテーションのクオリティが問われることは、言うまでもありません。失敗作のRPGのように、設定がすぐれていても中身がだいなしなら、良質なエンタメにはなりえないですから。

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いいちこらぼ、最強の演出アイテム「アイデア発想を助けるいいちこベースのオリジナルカクテル」。サンフランシスコのトップバーテンダーがレシピをつくりました。


3:「1アイデアソン」ではなく「1プラットフォーム」をつくる。

ぼくがプロモソンを立ち上げる際に常に意識しているのは「汎用性の高いフォーマットを創る」ことです。今までのアイデアソンは「1つのお題に対してひとつのタイトル」が当たり前でした。しかし、茶ッカソンやいいちこらぼは、お題は、お茶のことでなくてもいい、焼酎のことでなくてもいい、としています。

どういうことかというと、ぼくらは茶ッカソンを「お茶を飲みながら新しいアイデアについて考える現代版茶会」と、いいちこらぼを「いいちこベースのカクテルを飲みながら新しいアイデアについて考える知的バー空間」と定義しているのです。

そこで話されるお題は「なんでもいい」ということになります。

これが産み出した副産物が「さまざまな企業や団体とのコラボ」です。たとえば2016年12月には、伊藤園主催ではなく、港区さんの主催で「茶ッカソン」を開催しました。茶ッカソンのすでに持っている世界観やコミュニティベースを借りることで、より効果的な港区さんのファンコミュニティづくりを狙ったのです。伊藤園さんの主催ではないのですが、角野さんや河原やFC POPというユニットを一緒にやっているタムラカイくんといった、いつも一緒に茶ッカソンなどをつくっている仲間をきちんと巻き込み、ハイクオリティの茶ッカソンを一緒につくりあげました。

こうすることで港区さんにしてみたら「伊藤園さんは港区の活性化のために貢献してくれる!」という気持ちになりますし、茶ッカソンチームからすると、茶ッカソンを今後ますます広めていくための大事な仲間として、港区さんとつながることができます。「関わるひとたちがみんな嬉しい状態」をつくることができるのです。


茶ッカソンは、港区さんの他にも、Orenchi Ramenさん(ラーメン)、ダイワハウスさん(住宅)、ソニーさん(スマートホーム)、ヤマハ発動機さん(人工知能)、TOTOさん(ウォシュレット)、聖光学院さん(中学生、高校生による起業アイデア)などなど、さまざまなパートナーとコラボレーションを展開しています。このように「お茶を媒介して新しい発想が生まれる場」を多くの会社さんや団体さんとつくっていくことにより、茶ッカソンという場の持つブランド力を上げ、汎用的に新規アイデア創造に活用できる、1つのプラットフォームとして地位を確立させているのです。


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2014年5月に茶ッカソンをはじめて以来、ぼくはなんとなく「ぼくのやるアイデアソンは他のファシリテーターのやるものとは違うなあ」と勘付いていました。これを説明する術を持たなかったので、なんとなく「芸風の違い」で片付けていたのですが、昨年の秋にいいちこさんと東京ではじめて「いいちこらぼ」を開催した際「ひょっとしてこれはアイデアソンを進化させた新しい発明をしているのではないか」と再発見し「プロモソン」という名前をつけました。

いつかどこかにまとめてプロモソンについて書こう、とだけ思い、説明はまったくせずに、11月に公開した港区茶ッカソンの告知ページのプロフィールに「プロモソン提唱者」と書いていたのですが、これを友人のタムラカイくんが拾ってこんなブログにまとめてくれました。なんだ、こっちのほうがまとまってる気がする(笑)。本当に、ここに書かれているとおりのことを考えていたのです。

tamkaism.com

まったく説明してないのに、このあたりの概念がタムラくんに伝わったのは、彼が「いいちこらぼ」に参加していて、このアイデアソンが実はただのアイデアソンではない!と気づいていたからでしょう。それ以降、タムラくんはこのプロモソンづくりの相棒となっていて、FC POPというファシリテーションユニットを組んで、一緒に新しいプロモソンづくりに取り組んでます。実は、いくつかの大きなクライアントさんと、すでに新しいプロモソンの計画が進行中だったりもするのですよ。

もう一度、冒頭の角さんの言葉に戻ってみましょう。何かこう、答えのひとつとして、成立している気がしませんか?

「アイデアソンはアイデアを出すより、つながりができることが価値です。アイデアソンの価値の再定義をする時期にきているのではないでしょうか。アイデアソンの名前も変えるべきかもしれない。」


プロモソンは、日本人(河原あずや、タムラカイくんや、伊藤園さんや、三和酒類さん)が産み出した発明であり、日本発の新しいアイデアソンの進化形です。一緒にやってくれる仲間も募りたいですし、ぜひ一緒に盛り上げて、シーンを作っていきたいなと思っています。

イベントで世界を変えられるたった1つの理由〜「弱い紐帯」に着目せよ!

コミュニティ 新規事業 ミートアップ

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ニフティが運営するイベントハウス型飲食店「東京カルチャーカルチャー」のイベントにて。ニフティの三竹社長を中心に、ヤフー、リクルート、NTT、シャープ、ソニーなどの新規事業に関わる人たちが満面の笑みでカルチャーカルチャーのシャツを着て混じり合っている一幕です。この光景を支えるキーワードが「弱い紐帯です。


ぼくの職場の「東京カルチャーカルチャー」ニフティが2007年8月からおよそ10年間運営しているイベントハウス型飲食店です。ニフティは、ご存知の方が多い通り、インターネット接続や、クラウドビジネスの会社ですから、なぜネットの会社なのにイベントハウスを運営しているのか、不思議に思う方も少なくありません。

しかし、ぼくにとってみると、ネット企業がイベントを実施することは、まったく不思議なことではありません。なぜなら、イベントやミートアップ、そして、それらを重ねることで生まれる「リアルなつながり」は、特に新規性のあるビジネスづくりの領域において、大きなプラスになるからです。

「オープンイノベーション」が日本のビジネスの世界で流行語になって久しいですが、この1、2年、日本国内で、新規事業創造を目的としたイベント、ミートアップや、ハッカソンが増えてきました。日本でうまくまわっているかどうかの評価は別の方に譲ろうと思いますが、激しい環境変化により新しいビジネスを創ることが難しくなっている今「イベントは新規事業創造に役立つ」という仮説があるからこその流行なんだろうと思います。

日本での評価はさておき、おそらく日本でイベントなどを繰り返すことでオープンイノベーションを実践しようとしている人たちの多くが手本にしているイノベーションの聖地・サンフランシスコやシリコンバレーでは、実際に、イベントやミートアップのコミュニティが、新しいビジネスの創出に大きく寄与しています。シリコンバレーの強さの秘訣は、ミートアップやコミュニティの分厚さにあると言ってもいいくらいです。

ぼくが2013年8月に赴任して2016年7月に帰任するまでに、ニフティシリコンバレーで着実に新規事業開発の領域で成果をあげてきました。もうひとりのニフティ駐在員として、ニフティクラウドの立ち上げを牽引した上野聡志氏が2015年7月に赴任してからは、ニフティが現地で培ったコミュニティベースを生かし、期間とリソースの少なさにしては、多くのスタートアップとの提携案件を形にすることができました。

IoTを家庭に普及させるテクノロジーを北米から持ち込み国内でビジネス化するのを目的にニフティ東急電鉄がつくったジョイントベンチャー「Connected Design」の案件はサンフランシスコでのリサーチとネットワークから生まれました。IoTプラットフォームのスタートアップ「MODE」への出資や、CDNのスタートアップ「Fastly」との提携も、現地でつちかったネットワーク経由で飛び込んだ案件でした。

これらの案件は、もちろん、事業開発のプロである上野さんの頑張りがあってこそ実現したものです。しかし、赴任してわずか3ヶ月で彼が現地スタートアップとの商談を活性化し、半年で案件をモノにできたのは、2013年夏からニフティが培ってきたネットワークの基礎があったからでしたし、そのネットワークのほとんどは、イベントやミートアップを繰り返すことで、生まれたものでした。

シリコンバレーでぼくたちがイベントやミートアップを通じて手にいれたもの、それは「弱い紐帯(ちゅうたい)」と呼ばれる、緩い仲間意識を持つ、生きたつながりでした。それが、これらの案件をもたらす、大きな要因になったのです。

社会学の世界で提唱されている弱い紐帯の強さ」理論を、ご存知でしょうか? 実は、イベントが世界を動かす理由の根源が、この理論には隠れているのです。

これは、アメリカの社会学者であるマーク・グラノヴェッタ氏が提唱している理論です。英語では「The strength of weak ties(弱い紐帯の強さ)」と表現されます。

ラノヴェッターによれば、新しく、高い価値のある情報は、自分の家族や親友、職場の仲間といった社会的つながりが強い人々よりも、知り合いの知り合い、ちょっとした知り合いなど社会的つながりが弱い人々からもたらされる可能性が高いというのです。

家族や職場の仲間とのつながりを「強い紐帯」、ちょっとした知り合いとのつながりを「弱い紐帯」と彼は表現しています。いっけん見過ごされがちなこの「弱い紐帯」のほうに着目したのが、この理論のポイントです。

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わかりやすく手書きで「弱い紐帯理論」を図解してみました。


ビジネスに必要な人脈と聞いて、みなさんが想像するのは、緊密な関係を結んでいる同僚や、関連会社や、ビジネスパートナーかもしれません。しかし、この緊密な「強い紐帯」の関係からは、新しくて革新的な情報というのはもたらされません。同じコミュニティに属している中で流通する情報は、細部にわたる詳細な情報ではあるかもしれませんが、基本的には新規性はない「内輪(Internal Network)」の情報です。

しかし、実際にビジネスを大きく動かすような情報や案件は、実は普段出入りしている密な場の「外側」(New Cluster)からやってくることが多いのです。そして「内輪」と「外側」のハブとなる「緩いつながりを持つ存在」が弱い紐帯」(Weak Tie)です。

振り返ってみると、シリコンバレーでの提携案件のきっかけは、直接あった回数が2回しかなかったジャーナリストからの紹介や、数ヶ月ぶりにあったコンサルタントからの紹介がきっかけでした。それぞれの出会いが偶発性に満ちており「まさかこの方から情報がもたらされるとは!」という印象の出来事でした。そして、それぞれの「弱い紐帯」との出会いは、現地や日本でのイベントだったのです。

ちなみに、上記のジャーナリストの方とあった最初の場所は、まさに、伊藤園さんと一緒にニフティが2014年5月に共催した「第1回 茶ッカソン」なのです!

サンフランシスコ・シリコンバレーでは、この「弱い紐帯」を生かす方法論を、そこでビジネス活動をするローカルの企業やスタートアップの方々が、自然にとっています。そして、その文化の核となっているのが、イベントやミートアップなのです。

イベントやミートアップでは、特定のテーマに関心のあるさまざまなバックグラウンドを持つ方が、さまざまな場所から訪れます。前回の記事でも述べましたが、この、興味ベース、問題意識ベースで立ち上がった「はっきりとしたテーマ性」が、ネットワークづくりの効率性を生み出します。そして、さまざまな属性の方が自然と混じり合うことで、多様な緩いつながりが会を通じて形成されます。

日本ではFacebookが主でしょうが、サンフランシスコ・シリコンバレーではLinkedInを活用して、この緩いつながりをキープする場合が多いです。あいさつしたり、名刺を交換した方に、LinkedInの申請をし、コネクションを蓄積します。

そして、例えば、とあるジャンルをビジネス上掘る必要がある、となったときに、LinkedInのコネクションをあらためて掘り返すのです。リーチしたい特定の会社の人がいたらその人に直接「久しぶり!このミートアップであった●●だよ」と連絡します。もしくは、直接リーチしたい候補の会社とのコネクションを持つ、比較的近しい人を見つけ出し、その人経由でおめあての人を「紹介」をしてもらいます。結果、割と高確率で、ミーティングをセットアップすることが可能です。

この例をみると、LinkedInを通じて商談のためにコンタクトをとっているのは「ちょっとした知り合い」か「知り合いの知り合い」です。自身の関心領域周辺のミートアップでつながりを創ることは、効率的に特定テーマにおける「弱い紐帯」を作り出すということに直結するわけです。

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サンフランシスコ・シリコンバレーでネットワーク構築を支えるLinkedIn


もっと言うと、この「弱い紐帯」を更に効率的に構築する方法があります。それは「イベントやミートアップを主催すること」です。

ぼくがサンフランシスコ・シリコンバレーでイベントやミートアップを繰り返したのは、最初は直感からの行動だったのですが、後から思えば、来るべきときに備えて、この「弱い紐帯」をはりめぐらせるためでした。

主催者になれば、イベントやミートアップのテーマを「自身の関心領域」にいくらでも近づけることができ、結果、自身と近い関心を持っている人たちを一気に集めることができます。同じイベントをシリーズ化すれば、その人たちとのつながりを維持したり、再活性することも可能です。要するに、ビジネスに役立つ「弱い紐帯」づくりを、自らの手でキュレーションできるのです。

更に更に。自身がイベントやミートアップを主催して人を集めると、特定テーマにおけるスペシャリストと関心のある人たちを自身をハブにしてつなげることができます。面白いもので、自身がハブとなって、相手に質の高い情報を提供すると、したぶんだけ、めぐりめぐってその提供量や精度に応じて情報が返ってくるのです。

また、イベントやミートアップの中で「場を一緒に創る」共同作業をすると、仲間意識が芽生え「ちょっと遠いがいざというときに役立つ」人との生きたつながりが生まれます。

イベントやミートアップを通じ参加者にGiveを続けると、そのお返しのGiveをする人たちも増えてきたり、Giveをした相手が、自分たちが困ったときに、ちょっとした無理を聞いてくれるようになったりします。

そもそも良質なイベントやミートアップを開催すること自体が、コミュニティに対する「Give」になります。シリコンバレーでは、ニフティがイベントやミートアップをして色々な方々を混ぜていくことで、日本人コミュニティがまず活性化され、そこに親日のローカルの方々がどんどん参加してくれるようになり、今まで混ざらなかった層の人たちがどんどん仲良くなっていきました。ニフティさんのミートアップで友達が増えた、人生が変わった、そこのつながりで就職できた、そこでの出会いで起業したという方まで複数でてきました。

「自分の損得を先に考えない」のが、このGiveの効能を最大化するポイントでもあります。結果的に、サンフランシスコ・シリコンバレーの活動では、ぼくがGiveしてきた以上のGiveが、時を経てぼくの手元に返ってきました。結果、滅多にあえないキーマンが、いざという時にぼくらに質の高いアイドバイスをくれたり、案件を紹介してくれたり、別のキーマンを紹介してくれたり、メディアに紹介してくれたり、「ニフティは素晴らしいことをやっている」とぼくたちが何も頼んでいないのにプロモーションしてくれたり、あちこちで持ち上げてくれるようになったのです。


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帰任した後も、サンフランシスコ・シリコンバレーとまったく同じ思想で、ぼくはイベントやミートアップを繰り返しています。同じ問題意識を持つ人たちを集め、盛り上げ、つなげ、ひたすらGiveを続けています。すると、リピーターの増加と人づての紹介で、ますます案件が増え、体がもう2つ3つくらい欲しいくらいに(笑)ひっぱりだこの状態になってきました。

ニフティさんは素晴らしいことをやっている」「"ニフティとなら、きっとかなう。"というコーポレートスローガンをこういった活動を通じて体現されている」と言ってくださる外部の方も増え、その中には本当に社会的に影響力のある方も含まれています。シリコンバレーでの経験を生かし、新規事業系やスタートアップ系のイベントを増やすことで、ニフティの事業部との商談に結びついたケースも出てきました。

それらは、作為もなにもなく、自然と発生しているのです。ぼくらはただ、Giveを続けているだけです。結果、相手からGiveが返ってきつつあるのです。

イノベーティブと呼ばれるような「画期的なビジネス」がどのように生まれるか、その解はぼくは持ち合わせていませんが、過去の経験からひとつだけ確信を持って言えることは「イベントなどのリアルコミュニティ活動は(少なくとも中長期的には)新規なものを創り出すビジネス活動に大きく寄与する」ということです。

ぼくらは、イベントやミートアップをやめることはないでしょう。その活動が実は、広がっていく「弱い紐帯」の網を通じて、いざというとき助けてくれるたくさんの味方を作り、たくさんの周囲からのGiveを生み出し、ぼくらのビジネス活動を支えてくれるベースになると、確信しているからです。(逆に、短期的な視点でこれをやめてしまえば、すべてが台無しです。どんどん組織からGiveの精神が薄れ、社会からTakeを続けるだけの集合体ができあがるだけです。)

しかも、素晴らしいことには、ぼくらだけでなく、ぼくらの活動を通じて、関わってくれる周りの人たちも「弱い紐帯」を構築することができるのです。

結果、業界全体が活性化し、さらに社会全体が活性化し、新しいモノコトがどんどん生まれてく世界が出来上がってくるとぼくらは信じています。

WWW.(World Wide Web)という電子ネットワークの網は、世界を変えました。そして次の時代は「弱い紐帯」の織りなす人的ネットワークの網(Real Network)が、世界を変えると信じています。

だからこそ、ぼくらはイベント、ミートアップ、コミュニティづくりを、今日も明日もこの先も、ずっとずっと続けていくのです。


当ブログ記事に書かれていることは個人の見解であり、所属組織の公式な見解を述べているものではありませんので、ご留意ください(まあ一応)。

 

弱い靭帯、と表記してましたが、一方的かんちがいで、正しい訳は「弱い紐帯」とのことでした。つつしんで訂正します。

「自称・ミートアップ」はもうやめよう!〜アメリカで感じたミートアップコミュニティに必要な3つの要素。

ミートアップ コミュニティ

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2011年にはじめてニューヨークのミートアップ社を訪問しCEOのスコット・ハイファマン氏を取材しました。これは2016年の7月に再会したときの写真です。スコットさんは、とても熱い、強い理想を持った起業家です。

「ミートアップ」という言葉を聞いたこともある方もいらっしゃると思います。テクノロジー系の方や、スタートアップ系の方が使うことが比較的多い単語かもしれません。「●●ミートアップ開催!」という告知を見たことがある方も、それなりにいらっしゃるのではないでしょうか。

もともと「Meetup」はニューヨークで2001年に創業された「ミートアップ社」が産み出した造語です。ミートアップ社は、スコット・ハイファマン氏らにより創業され、2002年に「Meetup.com」というサービスを提供開始しました。以降、15年間にわたり運営を続け、「ミートアップ」という概念を全米、全世界に広げてきました。特にさかんなのは、ぼくも3年ほど滞在したサンフランシスコ・シリコンバレーで、テクノロジー系のコミュニティを中心に、数多くのミートアップが日々開催されています。

そんなアメリカ西海岸での流行の風を受けてか、2011年頃から、日本でも「ミートアップ」と名前を冠する集まりが顔を出し始め、徐々にその数を増やしています。Meetup.comは2015年に日本語完全対応を果たし、その概念を広げる土壌を整えつつあります。

しかし、日本とアメリカでミートアップ、あるいはミートアップの要素のあるイベントを開催し、数多くのミートアップに参加してきた身から見ると、アメリカのミートアップの多くにはあって、日本のミートアップにはない要素がある気がします。日本では「ミートアップ」と名前をつけて開催するものには、すべてではありませんが、時には「ミートアップ」という名前はつけているものの、中身はただのカンファレンスやビジネス勉強会というイベントもあり、「人が集まる場」というミートアップの表層だけをなぞった「自称・ミートアップ」も散見されます。

別に本場アメリカがえらい、と言うつもりは毛頭ないのですが「ミートアップ」の本質にあるものをきちんと見据えていかないと、言葉だけあって中身は失われた「ただの人の集まり」がどんどん増えていってしまう気がします。そして、これからの時代に重要なのは、このミートアップの本質の部分に目を向け、コミュニティを活性化し、様々なバックグラウンドの人たちがどんどん助け合う環境を整えることだと思うのです。

あえて強めに言いますが、そろそろ「自称・ミートアップ」はやめていい時期です。コミュニティ系イベントがだいぶ活性化してきている今は、「ミートアップ」の中にある大事な要素を組み上げて、コミュニティづくりの本質に立ち返る、いい頃合いなのではないでしょうか。

大事な前提をいうと、ミートアップは「イベント」ではなく「コミュニティ」です。そもそもアメリカでは多くのミートアップは、純粋に少人数の人たちの「会合」のイメージが強く、カフェの片隅や自宅で行ったりしており、イベントですらない場合がほとんどです。規模が大きくなるとイベントのようなステージと客席が同居するスタイルになることも多いですが、基本的な考え方としては「参加者同士の自発的な交流(インタラクション)」がメインの要素になり、プレゼンテーションやトークなどのステージコンテンツは、サブの要素となります。

また、コンテンツに重きを置く「イベント」がミートアップの要素を兼ね備えることもありますが、その要素を兼ね備えるには「コミュニティ構築」の考えをきちんと場に反映させる必要があります。「ミートアップ」と名前を冠されている場をみてみると、それができている場もあれば、できていない場も正直あります。特に多いのは「コミュニティを育てる」という概念が欠如していたり、ズレていたりする場です。この大事な概念が欠如したりズレた場作りを繰り返しても、結局のところ、ただ人が集まるだけの「にぎやかし」で終わってしまいます。

以下、ぼくが思う、特にアメリカのミートアップで感じた「ミートアップコミュニティに必要な3つの要素」をあげていきたいと思います。1オーガナイザーとしては、日本中でコミュニティ構築の本質をおさえた場が増えて、さまざまな人たちがフラットに助け合う環境が日本にできてくることを願ってやみません。もしミートアップのオーガナイザーが読者の方にいらっしゃれば、参考にされてみると、いいのではないかなと思います。


1:ミートアップは「興味ベース」「問題意識ベース」「課題ベース」で集まる場

ミートアップは、ある特定のジャンルに対する「興味・関心」「問題意識」「課題意識」などをもとに、さまざまな属性の人たちが集まる場です。

テーマを明確に設定し「興味・関心の領域が近い」人たちが集まることで、より効率的に問題の解決策がさぐれますし、会話のレベルもあわせやすくなります。

起業家系のミートアップに当てはめると、たとえば、架空の例ですが「渋谷の起業家ミートアップ」的な名前を冠したご近所飲み会系の集まりや「●●社ミートアップ」と名前を冠したその会社界隈のメンバーの集まりは、ミートアップの本質を考えたときには、薄い集まりにならざるをえません。

そうではなくて「資金調達に悩む人向けミートアップ」など、問題意識ベースの切り口にしたり「バイオテックミートアップ」などという風に、関心ジャンルベースの切り口にすると、参加者の「情報収集」「ネットワーク構築」「問題解決」に効率的な場が出来上がります。

同じ興味関心を持っている人間であれば、誰でも参加できるオープンさも大事な要素です。また逆に「この場は自分とはフィットしない」と思った人が去るのも自由な場である必要もあります。あるテーマを掲げ、門戸を開き続け、人が常に出入りする状態を整える必要があります。

問題がすでに解決した人も、今度は、同じ問題を抱える後進の人たちを助けられるかもしれません。そういった「特定の領域で解決能力を持つスペシャリスト」と「問題解決したい人」をマッチングしたり、「知識や経験を有する人」と「知識や経験を欲している人」をマッチングする場にしていくことも、また重要なポイントになります。

もちろん、こういう場を作っていくには、一度限りで終わらずに、定期的、不定期にでも継続していって、同じ興味関心を持つメンバーのベースを増やし、メンバー同士のコミュニケーションを活性化していくことも重要です。



2:ただテーマについて話すのではなく「お互いの顔がわかった状態で話す」場がミートアップ

1のようなことを書きましたが、実は、同じ関心領域の人たちが集まってただ雑談しても、ミートアップコミュニティとしては成立しません。ミートアップにとって重要なのは、「相手を知った状態で会話すること」つまり参加者同士がお互いの顔を知り、お互いの問題意識や関心領域が共有された状態で、コミュニケーションをとることです。

ミートアップ社のCEOのスコット・ハイファマン氏は、2011年にぼくと面会した際に、次のように述べていました。

 

「例えば、映画好きが集まって、その映画について話をする。これだけではコミュニティとは言えないと思います。あるテーマについて、お互いにお互いのことをよく知って会話をしている、そして一緒に共同作業をしている、それがコミュニティです。」

 

一度、ワシントンDCで、教育をテーマにしたミートアップを取材したことがありました。地域の図書館に15名ほどの方々があつまり、教育について熱心に議論していました。いちばん驚いたのは、仕切っているオーガナイザーが、すべての参加者の名前はもちろん、職業や問題意識、なぜ参加したかの理由などを精緻に把握していたことです。こんな風に。

「彼女は学校の先生で、学校教育に関心がある。彼は8歳の息子がいて、時々彼もつれてくるよ。彼と彼女は夫婦で参加してて、4歳と10歳の子供がいる。10歳の子は倉庫番という日本からきたパズルゲームにはまっているよ。」

 
参加する人の全員が全員、すべての参加者のことを深く理解した状態で参加するのは現実には難しいですが、フォローしてくれるコミュニティマネージャー的な存在がいれば、彼や彼女を介してミートアップコミュニティの一員として交流することが可能になります。そのため、ミートアップの場を活性化するには、オーガナイザーの「コミュニティマネージャー」としての資質がとても重要になってきます。その集まりの場を盛り上げるのはもちろんのこと、参加者のバックグラウンドを把握し、どういう問題意識や課題を持っているか、また、得意なことや苦手なことも把握し、その人にとって最適なマッチングを考えてコミュニティメンバーと引き合わせたりすることも時に必要です。


3:すべての参加者は平等であり、特定の誰かに利する場にはしない。

ミートアップの2大原則は「オープン」で「フラット」であることです。参加者は平等に扱われる必要があります。プレゼンテーションがあるミートアップもありますが、そこに登壇する人もまた、自分の出番が終わった瞬間に「登壇者」としてではなく「参加者」として場に参加する必要があります。講演会やカンファレンスのような「登壇者特別扱い」は不要ですし、むしろフラットな交流を阻害する要素にもなりえます。

そして大事なことは「主催者」も同様に「参加者」であるということです。企業系のミートアップにおいては、主催企業の利益のために動きたい、という欲求は当然でてくると思いますが、基本的にはその気持ちにブレーキをかける必要があります。「主催者だから自由にやっていい」というものでもないのです。

主催者は、場づくりに細心の注意を払い、参加者に対して「Give」を繰り返す必要があります。その見返りとして、たとえば短い告知をしたり、たとえば参加者に何かを配布したり、ということはあっていいと思いますが、基本的には「Give>>>>>>Take」という状態を作る必要があります。

企業がイベントを開催する場合は、さまざまな思惑があることも当然だと思います。たとえば採用であったり、パートナー企業探しだったり、営業だったり。しかし、それが前面にでた瞬間に、コミュニティとしてのミートアップは死んでしまいます。主催企業は、短期的リターンを追究するのではなく、長期的なリターンを設定して、場を育てていく必要があります。

主催者も登壇者も参加者も境界をつくらずに、場作りという共同作業を一緒に行うのがミートアップにおいては大事なことです。すべての参加者が「いい場をつくる」ためにコミュニティに対して自分ができるアクションを考え、実践し、具体的なGiveをしていく必要があります。誰かが一方的にTakeしようとするアクションを起こした際は、そういう人は排除していく必要も時には出てくるかもしれません。Giveができる人たちが適度なバランスで相互に作用しながら場を温めていく、それがミートアップの理想だとぼくは思っています。

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2011年12月のミートアップ社取材時の写真

2011年の12月に、ぼくはソーシャルカンパニーの市川裕康さんのお導きにより、ミートアップ社の共同創業者でCEOのスコット・ハイファマン氏と会うことができました。その時の彼の言葉はとても鮮烈で、今でも自分の中に刷り込まれています。彼は、2001年のニューヨークのテロをきっかけに、ミートアップという概念をつくり、サービスを開始しました。アメリカリアルコミュニティの希薄化が、テロのようなCrisis(危機)を招いたと感じたとスコットさんは言います。スコットさんは、なぜリアルなコミュニティが世の中に必要なのかを、次のように説明しています。

「おそらく最も大事なことは、もし人々が対話をしなくなれば、人々が共同作業をするキャパシティやポテンシャルが生まれてこないだろうということです。人々が出会って、お互いがつながりを持つことが生み出す可能性の1つです。そのような出来事の積み重ねで、人々のつながりが、ベターな社会、ベターな文化へとつながっていくのです。」

 
これは数多くの災害や危機にも直面している日本でも同様だと思いますし、いかに人々の対話を活性化して、つながりを太くしていき、志を持つ人同士の共同作業を増やしていくかが、今の時代に求められているのではないかと思います。それが、ぼくがイベントやミートアップ活動を続ける大きなモチベーションにもなっています。さまざまな人たちが手を取り合って世の中をよくしていったり、面白くしていったりする、そんなミートアップ的な場を増やしていきたいと考えながら、イベントやミートアップのオーガナイズをする日々です。そして、こういう考えに共感し、自らもそういう場を作っていく人たちが増えて行くことを、願ってやみません。この記事が、その一助になれば幸いです

最後に。こちらでぼくが2012年に書いたスコットさんへのロングインタビューが掲載されています。とても濃い記事なので、ぜひともこちらも読んでみてください。

Meetup社CEO スコット・ハイファマンインタビュー 第1回 ~Meetupのルーツを訪ねて。: AZ reports American Event Culture



ちなみに半分余談ですが「ミートアップ」の英語のつづりは「meet up」でも「meet-up」でもなく「Meetup」(Mは大文字:ソーシャルカンパニーの市川裕康さんご指摘ありがとうございます。)なのだそうです。ミートアップ社の社員の方に直々にそう教わりました。たまに間違えて使う方もいるので、ぜひ参考になさってください。

イベントはタイトルが9割!〜企画を当てたければ "名付け"に命を懸けろ!

企画書

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いいネーミングが浮かぶといいイベントのイメージが一気に出来上がる。「茶ッカソン」はまさにその好例と言えます。

前回の記事で「イベントは司会が9割」と書いておきながら、舌の根の乾かぬうちに断言します。「イベントはタイトルが9割です!」まあ、足すと18割になるということなので、イベント名がよくて司会がいいと、イベントが約2倍よくなると、そう解釈してください(笑)。


しかし実際の話、イベント名は、企画の中で最も重要な要素と言っても、過言ではないかもしれません。

企画書の話でも書きましたが、イベントのタイトルが浮かべば、企画はできたも同然です。逆に言うと、タイトルが浮かばないと、企画は完成できないのです。タイトルだけ浮かばなくて、企画を保留にすることすらあります。いや、52点くらいのネーミングなら、比較的容易に出てくるんですけど「これしかない!」というタイトルがピタッとはまるときははまるし、もっと何かでてくるはずだ、というモードになります。

そして、実際苦しんだ後に、ネーミングが降ってきたときのあの感覚は、本当に快感です。「画竜点睛」の故事に例えると、絵に描いた龍に、黒い目を入れる瞬間が、イベント企画においては「タイトルの決定」だと思うのです。

ぼくの場合はですが、ふとした拍子に突然にタイトルが降ってくるときが多いです。例えば、会議が煮詰まっていまいちネーミングが定まらずにいる帰り道、ぼんやりと夜道を歩いてると浮かんできたり。お風呂入ってるときだったり。電車乗ってる移動時間だったり。

時々起きるのは「トイレにいく前後に浮かぶ」です。会議が煮詰まったときに、トイレに立つときに、時々、「あ、なんかでそうだ」と予感がする瞬間があります。(もちろんトイレで「出すもの」以外です。念のため)。で、用を足して、すっきりした瞬間に、ピン、とネーミングが、天啓のごとくやってきます。後で紹介する「茶ッカソン」と「BIO HACK THE FUTURE」は、トイレに立った際に生まれました。

ぼくにも説明つかないんですけど、こういうのって、張り詰めた空気の場ではでてこず、自分がリラックスできる瞬間に、脳の緊張もふと緩み、その刺激が手伝ってドーパミンか何かがでてきて、ふわっと脳がまわりやすくなるんだと思うんですよね。

ぼくが尊敬する企画屋に、Jリーグのサッカーチーム・川崎フロンターレの宣伝部長をしている天野春果さんという業界有名人の天才がいます。イベントの企画を一緒に立てたこともあるのですが、彼もダジャレネーミングを軸にしたイベント企画づくりを得意としてて「まったく一緒やんー!」と、勝手にシンパシーを持っています。そんな天野さんは「企画名はパチンコ屋か風呂で思いつくなあ。名前が出た瞬間、企画ができた!!ってなるよ」と言っていて、ああ、似てるなあ、と一方的に思ったりもするのでした。

では、そんなぼくが名付けてきた大事な子どもたち、イベントのネーミングを以下にご紹介します。どれも「名前が浮かんで企画が完成した」イベントたちです。


「茶ッカソン」

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ニューヨークで2016年8月に開催された「茶ッカソン(Chackathon)」外国の方も混ざってのアイデアソンでは、英語での進行もやります。


サンフランシスコに駐在しているときに、シリコンバレーでおーいお茶をグーグルやFacebookなどの著名スタートアップに売り込み、伊藤園の売上を何倍にも増やした伝説の営業マン・角野賢一さんとのブレストに付き合ったときに、浮かんだネーミングです。

角野さんが、米国での茶ッカソン布教の盟友にのちになる後任の宮内栄一さんを引き連れ「伊藤園ハッカソンやりたいんです!」といって、ぼくのところに相談にきたのが2014年の1月でした。彼は春の帰任を控え、後任の後輩を引き連れ、帰る前に、自分が多大なる影響を受けた「ハッカソン」(エンジニアやデザイナーなどが集まり、1日2日程度かけて、あるお題に対してプロダクトの卵をつくる、シリコンバレー発祥のイベントのことです)をサンフランシスコで開催してから帰りたいと、何の前置きもなしに言ってきました。ぼくはサンフランシスコで何度かイベントをやっていたくらいで、そこまでイベント活動を活発にしていた時期ではなかったのですが、イベントならとにかくあずに聞け、と、エバーノートの外村さんというキーマンに紹介されて、来たと言います。

エバーノートの日本法人会長の外村さんの紹介とあれば、むげにもできず、ミーティングでブレストに付き合うことにしました。まあアイデアソン(ハッカソンから、アイデアだしのプロセスだけを切り抜いたイベントがアイデアソンで、半日で完結させることができ、開催ハードルもハッカソンに比べてとても低いのです)くらいならできるかもしれないですね、けどそもそも名前が「伊藤園ハッカソン」だと面白くないですし、続く気がしませんね…。伊藤園がやる必然性のあるストーリーとか世界観が必要だと思うんですよねえ、と、きょとんとする角野さんと栄一さんの前でまず話をしました。

 

そのあと数時間、ああでもない、こうでもない、どういうアイデアソンにしようか、と、もう1人サンフランシスコに赴任してたニフティ社員の米田さんを混ぜてブレストしました。けど、いまいち固まらない。伊藤園さんが持ってきたお茶をたくさん飲んで膀胱が膨れたぼくが、ふらふらしながらトイレにいき、用を足してる瞬間に、このネーミングが「降って」きました。

戻ってくるなりホワイトボードに黒いマーカーで「これどうでしょう、イケると思うんですけど」って描いたのが「茶ッカソン」という5文字。

嘘のような本当の話で、これが、サンフランシスコ・シリコンバレー、東京をはじめ、シアトル、ニューヨーク、京都などなど各地でシリーズ化された「茶ッカソン」のはじまりでした。「茶ッカソン」という名前が浮かんだ瞬間に、キャッチもリードも浮かんできて、世界観からイベントの雰囲気までイメージが怒涛の勢いで湧いてきて、「アイデアを着火する」なんて派生のダジャレまで出てきて、それをそのまま角野さんに渡しました。それをサンフランシスコのキーマンたちに角野さんが見せてまわったときに「これを考えたやつは天才だな!」と言われたそうで、とても嬉しかったのを覚えてます。そのあたりの経緯は、アスキーさんのこちらの記事に詳しいです。

シリコンバレー発で、角野さんが日本に上陸させた「茶ッカソン」が日本経済新聞アスキー東洋経済、ねとらぼなどで取り上げられて快進撃で話題を呼ぶにつれて「(野球のパリーグの)パパパパパッカソン」「(百均ショップとのコラボの)ヒャッカソン」などなどと、ダジャレでもじったハッカソン・アイデアソンが増えたのも面白い現象でした。たぶんハッカソンオーガナイザーのみなさんが「茶ッカソン」をみて「あ、こんなんでいいのか!アリなのか!」と気付いて「●●ハッカソン」というネーミングから切り替えたんだと思うのですよね。ぼくは勝手に自分のことを「ダジャレ系ハッカソン・アイデアソンの祖」と呼んでいますが、あながち間違いでもない気がします。実態はわからないですけど(笑)


「茶ッカソン」は名前の敷居の低さと独特の間合いのおかげか、テクノロジー系ではない方々、一般の方々の参加が多いのがひとつの特徴になっています。「茶ッカソン」って名前だけに惹かれてきた、なんて方までいて嬉しい限りです。結果、ハッカソン・アイデアソンの中ではコミュニティとして独自の進化を遂げているわけで、本当に名前って大事だなと思う事例です。

peatix.com


あ、茶ッカソン in SHIBUYAの応募締め切りが1月11日の19時までなので、興味のある方はお早めにこちらから応募どうぞ!


いいちこらぼ」

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サンフランシスコで開催された第1回「いいちこらぼ(iichiko-lab)」の様子


「茶ッカソン」の成功を目の当たりにし、伊藤園さんとも仲のいい三和酒類さんのアメリカの責任者の宮崎哲郎さんと考えたのが「焼酎を使ったアイデアソン」でした。けど、実は申し訳ないことに「アイデアソンやりたい」という宮崎さんのお誘いを、何度か保留してたんです。

なぜかというと「はまるイメージが湧いてこなかったから」。

いや、正確に言うと、イメージはありました。まず前提として、お酒という商材のこともあるので「茶ッカソン」と同じことはできない、というのがありました。茶ッカソンは子供でも参加できますが、焼酎を扱った瞬間に無理になります。それに加えて、お酒の持っている「セクシーさ」をコンセプトの中に表現したいな、と思っていたのです。お茶は、清らかさ、とか、無常観などの禅のイメージや、文化的で、もっとニュートラルなイメージがありますが、お酒を扱うのであれば「いい意味での不良感」や「高揚感」も表現したかったのです。そうなると、もちろん開催は、昼ではなく、夜がいいし。

けど、イメージはあれど、それを体現する企画がなかなか出てこなかったのです。お互い多忙にしていたというのもあって、頭の片隅には常にあったものの、三和酒類さんとのアイデアソンの企画は、しばらく実現しないままでした。

で、最初に「アイデアソンやりたいんです」と宮崎さんから言われて1年半くらいたった2016年の4月に「J-POP SUMMIT」という大きなイベントのプレイベントでいいちこイデアソンをやろうという流れになり、その打ち合わせの最中に遂にひとつのアイデアがぼくの脳内に閃きました。

それは「脳を刺激したり、心を落ち着かせる焼酎ベースのカクテルをサーブしながら進める、大人のための知的バー空間」というコンセプトを軸にしたアイデアソンの案でした。なんだったらステージにバーカウンターをつくり、照明もバーのように演出し、音楽もムーディーにして、ドレスコードもつくっちゃおう。1年半貯めていたものが噴き出すがごとくに、イメージが湯水のごとくわいてきて止まらなくなりました。


「これはいける!絶対カタチにできます!」となって、サンフランシスコのトップバーテンダーにアイデアソン用のオリジナルレシピ作成まで発注したのですが、なかなかネーミングが浮かばない。最初のコードネームは「いいちこそん」でしたがひねりがない。「Hang-thon」というのが2番目のコードネームでしたが、わかりづらいし、セクシーさがいまいち表現されてないし、日本でやることも想定していたので、英語に頼りすぎないネーミングがいいなと思ってボツに。かなり悩みました。

いろいろ悩んだ挙句にふとわいてきたのがいいちこらぼ」という名前でした。英語だと「iichiko-lab」。labはラボラトリー(研究所)の略で、新規事業を生み出す拠点にも使われます。そして、英語だと「らぶ」と発音します。これを「LOVE」と掛けたダジャレにしつつ(ちゃんとアメリカ人にも受けました(笑))「いいちこ+コラボレーション」「いいちこ愛」「いいちこ+ラボラトリー」という3つの意味がかけあわさり、しかも響きも柔らかくて口に出して言いやすい。三和酒類さんの大事なブランド「いいちこ iichiko」の訴求にもつながる!と、浮かんだ瞬間に即決していました。

いいちこらぼ第1回はサンフランシスコで2016年の6月に開催。これがアメリカ人のトップバーテンダーやお酒のメディアの編集者が目を丸くするくらいの大盛況。三和酒類さん社内にも評判はすぐに広まり、ぼくが帰任したあとの同年11月に東京第1回を開催しました。三和酒類創業家の役員の方も審査員として参加いただき大興奮で拠点のある大分県宇佐市まで帰られました。三和酒類さんの中でもとても愛されている、ニフティと育てている大事なイベントのひとつです。

「BIO HACK THE FUTURE」

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これもトイレで降ってきたネーミング。しかも、ロゴごとセットで浮かびました(笑)。言うのも野暮ですが「BACK TO THE FUTURE」のパロディです。

バイオテックに特化したとてもニッチなコミュニティイベントをやりたい、だけど研究者とかマニアだけの勉強会的な集まりにはしたくなくて、ポップな開かれたイメージでやりたい、というデジタルガレージさんと500 Startups Japanさんのオーダーで、企画の骨組みを考えました。そのときにも、企画の内容は大体見えたのだけど、あとはネーミングだけ!という状態になりました。このときは「何か出てきそうで出てこない」という、まるで喉に魚の小骨がひっかかったような状態が1時間くらい続きました。

ただ、トイレにいきたくなったときに「ひょっとして、いいの出てくるかな?」という予感がちょっとあったんです。本当に。ただ、そんなにうまいこといくわけないだろう、とか疑いつつ用を足したのですが、あら不思議、出すものだしたら、また降ってきたじゃないですか。

このときも、トイレから戻って、検討メンバーに案を見せた瞬間に「おおお!」と感嘆の声がわき、一瞬で企画が固まりました。

「DEMO DAY THE MOVIE」

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これも500 Startups Japanさんとニフティ東京カルチャーカルチャーの共同企画です。2015年12月、当時はサンフランシスコ拠点だったぼくが、発足したての500 Startups Japanに日本出張で訪問した際に「シリコンバレーのデモデイ(何十ものスタートアップが自社サービスのプレゼンテーションを実施する一種の卒業式イベント)を動画を流しながらパブリックビューイングするイベント」の構想を伝えたところ、瞬時に「やりましょう!」と回答いただき、今や3ヶ月に1回開催する風物詩イベントになってます。

 

サンフランシスコの起業家の岩山さんという方と打ち合わせしてるときに「シリコンバレーのデモディを臨場感たっぷりに動画で伝えるイベントってありかも」という話題になったのが発端で、この企画のアウトラインが生まれました。


で、タイトルですが、これはぼくの中ではけっこうレアケースで、企画のアウトラインがある段階から頭の片隅に、コードネーム的にずっとありました。最初から「DEMO DAY THE MOVIE」というイメージの元、出来上がった企画だったんですね、たぶん、自分の中では。(…というあいまいな表現使うくらいに、どうやってひねり出したのか覚えていないのです。)

通常は、何かが映画化されるときに慣用句的に使われる「〜THE MOVIE」ですが、デモデイ映像自体をコンテンツ化するこのイベントには、別の意味ではまるな、と思ったのです。これはイベント仮タイトルとして500 Startupsに提示した段階で、すんなり通りました。上のバナーはぼくのデザインですが、とにかくB級映画感を意識して作りました。

ちなみに第2回をやるときに「Season2」とつけたのは、500 Startups Japanの澤山陽平さんです。澤山さんから第2回のタイトル案が届いて、見た瞬間にニヤリとしました。この感覚が通じるから、ずっと一緒にイベントやれるんだろうなあ。以降、Season4まで続いてます。

……
他にも公開しているものからプライベートなものまで、無数のイベントやコミュニティの名付けを行ってきました。「名前をつける」というのはそれだけで象徴的な意味合いもでてきますし、各企画が自分の子供のような、そんな思い入れが生まれます。いいタイトルがついたほうが、可愛がり方も増しますし、自分の子供として送り出す以上は、時間などの制約はあれど、やはり、納得した名前で送り出したいものです。

冒頭に少し書きましたが、ぼくのイメージでは「イベントの名付け」は、「画竜点睛を欠く」で言うところの、筆で龍の目に、黒目を描く瞬間です。つまり、まだ平面なままのイベント企画を「立体化」するために、魂を吹き込む儀式です。ここは、イベント屋としての命を懸けて、臨んでいる場面でもあります。大げさに言うのであれば。

企画が当たるか当たらないかは生物ですし、運次第なところもあります。しかし、いいイベント名は、確実に、成功の確率を引き上げます。そのネーミングひとつで、関係者のモチベーションも変わってきますし、お客さんの期待も変わってくるからです。とにかく、わかりやすく、伝わりやすく、だけどハードルが下がる、親しみが持てるようなネーミングを、悩みながら、ひねりだしている日々です。

BGMは、スピッツで「名前をつけてやる」。締めにどうぞ。

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イベントは司会が9割!〜カルカルで学んだイベントを成功に導く3つの司会術

司会・ファシリテート

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普通のイベントプロデューサーには一般的ではないのかもしれませんが、東京カルチャーカルチャーでは、すべてのプロデューサーが、多くのイベントで司会進行も行います。

イベントを盛り上げるための要素はたくさんありますが、その中でも重要なピースは「司会(MC)」です。ぼくの職場の東京カルチャーカルチャー(カルカル)のコンテンツの多くは登壇者によるトークを軸とする「トークライブ」であり、トークライブでは、他のエンタメコンテンツに比べても、ますます進行役である司会の重要性は増します。チーフプロデューサーでありぼくのイベントの師匠の横山さんは「イベントは司会が9割」とよく言います。

確かに、さまざまな外のトークイベントをみると、司会進行に不満を覚えることは多いです。「俺のほうがうまくやれるよ!」みたいなライバル心もなくはないのですが(笑)さまざまな要素が不満の要素にはあります。たとえば、声が小さい、とか、登壇者のひとりのトークが長くなりすぎて配分ができてない、とか、会場は「もう終わってよ」という空気なのにどんどん伸びる、とか、まあ、いろいろです。

トークコンテンツにおいては、司会は各コンテンツの「ファシリテーター」を兼ねることも多いです。Facilitateとは、英語で「促進する」という意味で、要するにこの場合の司会の役割は「トークの促進役」ということになります。

一方で、たまにみられるのが「みなさまに質問です。〜についてどう思いますか?●●さんはいかがですか?▲▲さんは〜?」という前振りだけを登壇者にして、あとはひたすら聞くだけ、という司会進行役です。いわゆるビジネスイベントの「パネルトーク」にありがちな展開なのですが、これが何をFacilitate(促進)しているかと言うと、うーん、促進役、というか、調整役で、手旗信号でやってる交通整理の域を出ていないなあ、という気も致します。

このスタイルでも面白くなるときは、あります。しかし、実はこのスタイルは、個々の登壇者のトークスキルへの依存度がとても高いのです。この手旗信号の「前振り」に対して、面白い小話ができる登壇者がいれば、どかんと盛り上がります。しかし、たとえば3人登壇者が並ぶときに、3人ともこのような話術に長けていることは非常に少ないです。

ぼくが進行役をするときに心がけるのは、この依存性をできるだけ廃して、話が上手なひとはもっと上手にみせ、あまり前で話すことに慣れていない方の個性も引き出し会話に混ぜ、ここでしか聞けない話がどんどん飛び出すようにして、会話にリズムとグルーヴをもたらし、お客さんに「この話が聞けてなんかよかった!」と思わせるようにしよう、ということです。

そのために心がけていることが、主に3つあるので、ご紹介しますね。

まず1つ目は、自身の立場を「最も登壇者に近い観客」と位置付けることです。

どういうことか。まず、登壇者の話に対して、とにかく反応します。うなずいたり、相槌を口にだしていったり、「え?そうなんですか?」と混ぜ返したり。不自然に見えない程度に、やや大げさに分かりやすくこういうリアクションを繰り返します。こうすることで「ノリ」と「熱」が産まれます。だって、みなさんのプライベートでも、聞き手がうんうんと熱心に反応してくれたほうが、トークに熱が入りやすいですよね。それとまったく一緒のことをやります。

そして、ただ相槌をうつだけではなくて、本当に自分が、相手の話題に熱心に食いつき、没入していくことが大事です。たとえ、本来は自分の関心とは遠いテーマでも、とにかく「この会話にすごく興味があるしどんどん聞きたい!」という「空気をつくる」のです。(ぼくの場合は、たいてい、本当に楽しくなっちゃうし、話をどんどん聞きたくなっちゃうんですけど)

「質問」も大事です。相手の興味を刺激するような質問を必死に用意します。いい質問をひとつ、登壇者にくりだせると、登壇者の自身に対する関心の強さへのアピールになり「この人と会話するのは楽しい!」というモードに引っ張ることができます。質問への答えというのは、そのジャンルに対する登壇者の考え方をあぶりだしますし、同じ質問を他の登壇者に繰り出すとまた別の視点がそこに加わります。質問した当人も気持ちいいし、気持ちいいとますます会話は盛り上がります。

この項目の最後。もうひとつ大事なのは「ツッコミ」です。笑いにつながりそうなことを登壇者がいったらすかさずツッコミをいれます。お笑いバラエティ番組をみているとよくわかりますが、上手な司会の上手さの要因は「ツッコミ」です。登壇者が「さあどうぞ」と美味しいタイミングでネタを投下した際はしっかりツッコミを入れて、ちゃんといじり倒して、会話のグルーヴを作っていくことがとても大事です。

うなづき、相槌、質問、ツッコミ、いじり。それらは実は、心の中でお客さんがトークを聞きながら延々やっていることです。「お客さんの代表」として、客席にいるお客さんが内心思っていること、行動していることを代弁してひとつひとつカタチにしていくと、お客さんがステージに感情移入してくれることにつながります。こんな風に、特等席でトークを楽しんでる観客という感覚を持って、ステージをつくるのをぼくは心がけてます。


2つ目は「すべてのお客さんに優しいトークをつくる」ということです。

ビジネス系イベントのパネルトークによくあるのが「専門用語乱発モード」に入ることです。これが非常に扱いに繊細さが必要でして、専門用語がちょいちょいと飛び出してくると、司会としてのぼくは、モードを切り替えるようにしてます。

 

具体的にはどうするのか、というと、客席のうちほんの数名でも「わからないかも?」という単語が出てきたら躊躇なく止めて「なるほど!ところですみません、●●●ってなんですか?」と聞くのです。知っている単語でも、知らないふりで質問することもあります。難しい概念だったりすると、わかりやすく「ああ、ちょっと難しいけど、要するに●●みたいなものってことですかね?」って噛み砕いた例えで説明を試みます。


実はトークコンテンツにおいていちばん避けなくてはならないのは「内輪談義に陥る」ことです。内輪の話に終始するステージトークには、コミュニティの外からきたはじめてのお客さんは一気に醒めるものです。これでは、開かれたコンテンツにはなりません。

 

専門用語には、無意識に人の縄張り意識を促す効力があるらしく「その専門用語、おれもわかる!」みたいな仲間意識からか、一度飛び出すとどんどん専門用語の応酬になったりするのです。しかし専門用語というのは要するに「究極の内輪の言語」なので、内輪のひとたちにとっては仲間意識が強められるかもですが、外側の人間を結果置いてきぼりにしてしまうことが、ままあるのです。

 

まあ、そこまでいかなくても、わかんない単語がたくさんある本だと、読書が進まなくなる、みたいなことは多々ありますよね。トークライブも本とおなじく「エンタメ」なので、究極に分かりやすさを追究する必要があるのです。

500 Starups Japanさんと一緒にやったイベントで「SMB」という単語がでてきました。スタートアップ系の仕事をしてる方やコンサルさんはよく使うのでステージのみなさんは躊躇なく何度も繰り返し使っていたのですが、ぼくはすかさずに「あの、ぼく横文字苦手なんですが、SMBってなんですか?」って聞きました。ここで勘のいい登壇者は「しまった!」と思ってくれて「スモールビジネスの略ですよ」と返してくれます。ぼくはこう返しました。「ああ、つまり中小企業ですね!なるほど!」

そして、そのイベントの終演後アンケートにこんなものを発見しました。「司会の方が、専門用語を噛み砕いてくれたので、脱落せずに済みました。SMBってわからなくて、一瞬どうしようって置いてきぼりになりかけたんですが、説明してくれて続きに集中することができました!」

 

これは嬉しかったですね。主催者の500 Startups Japanの澤山さんも「さすがプロの司会ですね!これ大事なんですね!」と喜んでくれました。

トークやメディアコンテンツには「コンテンツは自分の母親にもわかるように噛み砕こう」という鉄則もあり、司会はできるだけわかりやすく今行われている会話を進めようと思うのです。しかし、すべての登壇者がしゃべりのプロではないので、わかりやすさをイメージするまでには至りません。それはそうですよね。ステージ慣れしてない方にしてみたら、それが「普通」なのです。であれば、司会がプロ役としてそのポイントをしっかりと意識して、会話をリードしていく必要があるのです。


3番目に心がけているのは「リズムやテンポ」です。安定した、だれない、強弱、メリハリのある会話をつくるよう心がけます。

司会は、時計に対して常に敏感です。時間をどうマネジメントするかが最も大事な仕事のひとつです。司会は、お客さんの表情にも敏感です。お客さんが小さなあくびをひとつしたら、今の話題をまいて、次のトピックに移ってみたりします。司会は、登壇者が大事なこと、いいことを言ったのに、早口で流れてしまったりして客席の反応が薄かった場合、あえてそれをゆっくりと繰り返して強調します。司会は、会話を落ち着けたいときはゆっくりしゃべり、会話をたたみかけたいときはしゃべりのテンポをあげます。

司会進行の仕事って、オーケストラの指揮者に近いなあって時々思うのですが、自身がテンポを作っているのだと強く意識して、トークが単調にならないように心がけてます。

音楽もそうなんですが、リズムやテンポが安定すると、アマチュアのオーケストラやバンドでも、一気に安定感がでてきます。「リズム体」(※)という言葉が音楽の用語にありますが、同じことがトークにもいえます。音楽の根幹は、リズム楽器と低音楽器がつくるビートであり、だからこそ「体」と表現するのです。トークも一緒です。進行役による「リズム体」が安定すれば、素人感が薄れ、プロのステージにより近づきます。「パネルトーク」と「トークライブ」の違いは、このリズム体の違いだと言っても、いいかもしれません。

 

(※ ロックバンドでいうと、リズムを創る係の、ドラムとベースのことです。リズム隊、という表記もありますが、ぼくは「体」という表記のほうがしっくりくるので、こちらを使ってます。ワインでも言いますよね。ボディ。ちなみにバンドでいうと、ドラムとベース以外を「上物」と呼びますが、リズム体という基礎に乗っかってるから「上物」なのです。基礎がないとどんなにうまくても、崩れちゃいますよね。)


……
とはいえ、これらの司会スキルを、ぼくは誰に習ったわけでもありません。すべて独学で身につけました。なぜ身についたかというと、2008年から2012年まで4年間、600本以上のイベントの進行を見続けてきたのが大きかったのです。

そこで、カルカルのプロデューサーの横山さんやテリー植田さん、芸人さんの進行をみて、どうすれば、登壇慣れしていない方をステージにあげても面白く見せられるかを学んだのです。

で、そういう方々が上手なぶん、あまり上手ではない方との違いがよく見えるようになりました。そのあとサンフランシスコにわたり、本格的にイベントの司会をすることになったのですが、とにかく、いい司会、だめな司会をじっと見て、自分なりに考えて、実践しては改善した結果、今まで書いたようなことが徐々にできるようになってきた気がします。とにかく、上達のためには、勉強、観察と、実践あるのみです。

手軽な勉強、観察の方法としては、やはりテレビのバラエティや、ラジオなどで、上手な芸人さんの司会進行などのしゃべりをじっくり聞いてみることをお勧めします。個人的には、タモリさんはもちろん、伊集院光さん、引退されましたが島田紳助さん、マツコデラックスさんなどがとても勉強になる気がします。いずれの芸人さんも「素人いじり」が上手という特徴もあります。意識してバラエティを観るだけでも、だいぶ違いますよ!

ちなみに、個人的には、なんですが、明石家さんまさんはあまり参考になりません。天才すぎるので。たぶん、彼の話術は誰にもまねできませんね…。